1991 Fiscal Year Annual Research Report
総胆管拡張症の成因とその発癌母地としての基礎的研究
Project/Area Number |
02670590
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山川 達郎 帝京大学, 医学部, 教授 (10082116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 拓 帝京大学, 医学部, 助手 (50211553)
小林 俊介 帝京大学, 医学部, 講師 (70195783)
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Keywords | 総胆管拡張症 / 総胆管腸管吻合ラット |
Research Abstract |
ラットを用い、総胆管・空腸吻合術を施行後12ヶ月間、経時的に総胆管・空腸吻合部、総胆管、肝内胆管の病理学的変化を、付随して起こる慢性炎症との相関から追跡する一方、胆道シンチや肝機能検査を行い、術後の総胆管拡張症の成因を検討した。モデル作製法は、胆管を切断、その切断端を、腸管を穿刺した針内に挿入し、対側腸管壁より引き出し胆管を切断し開孔、腸管内に帰し、胆管腸管内挿入部と肝門部を一針縫合する方法を用いた。これは容易かつ迅速に胆管空腸吻合が可能な有用な方法であることが判明した。また、当初は粘膜上皮の変化と胆管径との関係を電顕学的にも検討しようと考え何例か実施したが、粘膜上皮と過形成に伴う粘液腺の増生など、光顕レベルでの検討でこの原因を追求し得ると考えられたので、電顕的検討は中断した。 結果:(1)胆管空腸吻合術後の胆管の変化、すなわち拡張、粘膜の肥厚粘液腺の増生は、胆管消化管吻合によりもたらされる新しい環境に対する生体のadaptationによる変化であると考えられた。(2)胆管拡張が著明な例ではアミラ-ゼは高値となり、細菌培養も陽性となる傾向がみられ腸内容の胆管への逆流とうっ滞、ならびに感染が胆管上皮の肥厚、胆管粘液腺の増生を招き、胆管の拡張を惹起すると考えられた。(3)吻合法によっては結石の形成がみられる場合があり、その傾向は下部消化管吻合を行ったものにより多く認められた。結石形成が認められた例では細菌培養も陽性となることから、これらの関係もさらに検討することは、臨床的に最も適切な手術手技を確立する上で重要な知見を与えてくれるものと思われた。(4)発癌実験では癌の発生はなく、このような変化が発癌母地となることは立証できなかったが、実験動物、発癌物質の種類の検討が必要であること考えられた。しかし胆管拡張と発癌を検討するには本法によって作製されるモデルは有用であると考えられた。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] 永井 哲志,輦止 勝磨,山川 達郎,近藤 芳夫: "総胆管空腸吻合ならびに総胆管大腸吻合後における総胆管上皮の変化についての実験的研究" 帝京医学雑誌. 14. 463-470 (1991)