Research Abstract |
昨年度は脊損後の管理方法が,確立されていなかったために,胸腰椎移行部での脊損後1週間以上の経過を追うことが出来なかった。本年度は対象をオスからメスに、変更したところ、脊損後,4週間までの生存が可能となり,神経成長因子測定のための,膀胱標本を用意することができた。生後10週に脊髄損傷を作成し,その後1週毎に,4週間の生後14週までの11,12,13,14週で,膀胱重量と体重を測定した結果は,それぞれ,153.7±51.7,241.2±112.7,176.6±136.6,544.0±213.3mgと133.3±7.5,140.0±8.2,158.9±16.6,125.0±16.8gであった。膀胱重量は増加し,体重は減少した。メスではオスと比較して尿道抵抗が低いので,過伸展から致死的な膀胱破裂まで,至ることはない点が利点であったと思われる。また,脊損を施行しないコントロ-ル群についても生後10週から,14週まで,各週毎に10頭,合計50頭の膀胱標本を準備することができた。 神経成長因子の測定方法も,既知量のNGPから得られる標準曲線が1,10,25,50,100ng/mlの濃度内で安定化し,さらに,各試料からの測定値も信頼できるようになった。脊損後には脊髄ショックに続発した尿閉となるが,排尿が自立する1週間後以降から膀胱からのNGFが増加することを予期したが,コントロ-ル群と比較して,脊損群のNGF値に変化が生じたと断定することはできなかった。胸腰椎移行部における脊髄損傷の場合には膀胱NGFの関与が否定的となったが,他の原因による下部尿路機能障害時には膀胱NGFが何らかの役割を果たす可能性は残されており,今後,さらに種々の排尿障害モデルを対象として検討を加える予定である。
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