1991 Fiscal Year Annual Research Report
Streptococcus mutansのATP代謝
Project/Area Number |
02670832
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
児玉 孝雄 岡山大学, 歯学部, 助教授 (30034200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 寛行 岡山大学, 歯学部, 助手 (80168947)
福井 一博 岡山大学, 歯学部, 助教授 (70034171)
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Keywords | Streptococcus mutans / ATP / エネルギ-代謝 |
Research Abstract |
Streptococcus rattus FAー1株を低pH環境下で培養すると、細胞維持エネルギ-のコストが顕著に増加することが明らかとなった(前年度)。この維持エネルギ-は細胞の恒常性を保つために費やされるエネルギ-であるとすると、酸性条件下で細胞内pHを中性に保つために多くのエネルギ-が消費されていると考えられる。そこで、細胞内pH調節に重要な役割を演じているプロトンATPase活性を中性(pH7.0)増殖細胞、酸性(pH5.0)増殖細胞について比較検討した。 ATPase活性の測定には、超高圧細胞破砕法で調製した膜画分を用い、遊離リン酸の定量には、Kodamaらの微量測定法を使用して、ATPase活性測定法をまず確立した。酸性増殖菌(低pH適応菌)のATPase活性は、H^+特異的イオノホアであるFCCPによって顕著に促進され、最大活性を示すpH6.2では、FCCP非存在かの活性の約2倍となった。一方、中性増殖菌(非適応菌)のATPase活性は、低pH適応菌と比べて著しく低く、FCCPによる活性の促進も見られなかった。超高圧細胞破砕法で調製した膜は反転膜であることを考慮すると、FCCPによって上昇した活性が膜画分のH^+ーATPasd量を反映していると考えられる。このことを確認するために、膜画分をSDSーPAGE分析およびウェスタンブロットを行った。低pH適応菌にはF1F0型ATPaseのサブユニットと同じ抗原性を示す蛋白質が検出されたが、非適応菌には、これらの蛋白質はほとんど検出されなかった。この様にATPase含有量が異なるにもかかわず、両細胞ともグルコ-ス賦活化による△pH形成能と解糖活性には差異がなかった。両細胞の△pH形成はFCCPによって消失したが、FCCPは低pH適応菌の解糖活性を非適応菌に比べて著しく促進した。これらの観察結果は、ATP産生系(解糖)とATP分解系(H^+ーATPase)との共役を強く示唆するものである。現在、この様な共役現象を詳細に解析中である。
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[Publications] 宮城 淳,児玉 孝雄,福井 一博,太田 寅行,下野 勉,加藤 慶二郎: "Streptococcus rattusの低pH適応にともなうH^+ーATPaseの誘導" 歯科基礎医学会雑誌. 33. 187 (1991)