1991 Fiscal Year Annual Research Report
老化研究モデル動物としての老齢カニクイザルの免疫機能の解析
Project/Area Number |
02680037
|
Research Institution | The university of Tokyo |
Principal Investigator |
甲斐 知恵子 東京大学, 農学部, 助教授 (10167330)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺尾 恵治 国立予防衛生研究所, 霊長類センター, 主任研究員 (30109920)
山内 一也 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30072888)
|
Keywords | 老化 / カニクイザル / 免疫機能 / T細胞 / B細胞 / NK細胞 / マクロファ-ジ |
Research Abstract |
本研究は、高齢者の免疫機能解析のモデルとして、カニクイザルの免疫系の量および機能の加齢変化を調査し、その有用性を明らかにすることを目的としている。本年度は前年度の基礎的調査を基に、主要リンパ球サブセットの変化、免疫機能変化による老齢ザル年令の決定、カニクイザルのB細胞機能検査法の開発を試み、新たに以下の知見を得た。 1)汎T、CD4+、CD8+細胞のsubset lebelは、いずれも加齢に伴う増加傾向を示した。 2)B、NK、マクロファ-ジ細胞はいずれも加齢に伴い低下傾向を示した。 3)興味あることにヒトと異なり、末梢血中にCD4+/CD8+細胞が比較的高率に存在し加齢に伴う増加が観察された。これは加齢に伴う胸腺機能低下とT細胞分化機構の解明のために非常に有用なモデルとなることを示唆している。 4)溶血補体価、抗A、B抗体価が5ー10歳齢をピ-クとして低下することから20歳以上のカニクイザルを免疫学的老齢ザルと判断した。 5)老齢ザル(20歳以上)と壮年ザル(5ー7歳)とを比較した結果、老齢ザルでは自己抗体の検出率が有意に高く、T細胞機能、特にILー2産生能とIL2R発現能の顕著な低下が認められた。 6)NK活性、マクロファ-ジの貪食能などの非特異的免疫機能には変化が認められなかった。 7)ヒト、マウスの系で用いられるB細胞幼若化反応はサル類では有効でなく、よい測定法がないためその研究は遅れていた。本年、LPSとtrypsinとを用いることにより、十分測定し得る方法の確立に成功した。現在これを用いB細胞機能の基礎的調査および加齢に伴う変化を検索中である。 以上、カニクイザル免疫機能の基礎的解析を行なった結果、量的、機能的変化ではヒトの高齢者と同様の傾向を示し、また新たな知見および解析法の確立により、カニクイザルは老化に伴う免疫機能変化の解明に非常に重要なモデルであると考えられた。
|
Research Products
(7 results)
-
[Publications] Terao,K.et al: "Immune functions in aged cynomolgus monkeys.〔1〕Hemolytic complement activity,matural antibody level,blastogenesis,natural killer activity and phagocytosis." Primatology. 639-640 (1991)
-
[Publications] Terao,K.et al: "Immune functions in aged cynomolgus monkeys.〔II〕ILー2 production and ILー2 receptor expression" Promatology. 641-642 (1991)
-
[Publications] Terao,K.et al: "Effects of hyperlipaemic serum on interleukinー2(ILー2)production,ILー2 receptor expression,and T cell proliferation induced by ILー2 in cynomolgus monkeys." Jpn,J.Med,Sci.Biol.44. 17-28 (1991)
-
[Publications] Kai,C.et al: "Monoclonal and polyclonal antibodies to human B crossーreacting to B cells of cynomolgus,green and rhurus monkys." J.Med.Primatol.
-
[Publications] AlーkuraiーNorimine,W.et al: "The optimal conditions of blastogenic response of peripheral blood lymphocytes to T and B cell mitogens in cynomolgus monkeys." J.Med.Primatol.
-
[Publications] 山内 一也,狩野 恭一,吉川 泰弘,甲斐 知恵子: "獣医免疫学" 文永堂, 243 (1991)
-
[Publications] 寺尾 恵治: "比較発達心理学" ソフィア, (1992)