1990 Fiscal Year Annual Research Report
近現代における生命観・人間観についての歴史的・比較思想的研究
Project/Area Number |
02680089
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉山 滋郎 筑波大学, 哲学思想学系, 講師 (30179171)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 傳司 南山大学, 文学部, 助教授 (70195791)
金森 修 筑波大学, 現代語・現代文化学系, 講師 (90192541)
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Keywords | 生命観 / 人間観 / 文化相対主義 / 生物学史 / 比較思想 / 科学観 |
Research Abstract |
1.日本人の生命観に関する先行研究を整理するとともに、明治・大正期の科学者の生命に関する論考を収集し、それらのデ-タ・ベ-ス化も推進している。これまでに得られた資料を時代的背景の中に位置づけながら考察するという作業を進めつつあり、これまでのところ、明治の前半期と昭和10年代ぐらいとの間には、単に生命観だけにとどまらない大きな意識転換があり、そうした意識転換の契機として大正デモクラシ-が大きな意味を持っていたことが、数量的にも裏付けられつつある。 2.外的規定によって生体の活動原理を規制しようとする着想はたえず批判されてきた。その背景には、決して無視できない価値の次元が人間だけでなく生物一般にとっても存在するという視点があった。物理学的還元論がおさえる枠組みと自己理解との折り合わせをそれ自身何等かの価値表現の一つである近代生物学がどのように扱おうとしたか、その問題設定にとって重要な示唆を与える概念群には環境・時間・全体などがあると考えられる。 3.文化人類学が、ヨ-ロッパ文化を到達点とする発展段階の図式でそれ以外の文化を裁断しようとする進化論的な人類学を批判する中から「文化相対主義」が生まれてきた。しかし、進化論の拒否とともに、文化人類学は身体/精神の二元論的図式を採用し、生物学的アプロ-チは身体にのみ許し、精神に対しては徹底的な可変性を認める文化中心主義をとるようになった。ここからは人間の本性を文化のみの関数とみなそうとする傾向も生じてくる。また、このパラダイムは、第二次大戦後さまざまな変容を遂げていくが、特にアメリカとヨ-ロッパではその変容に微妙な差異がみられる。
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Research Products
(1 results)