1990 Fiscal Year Annual Research Report
アミノ酸脱水素酵素の構造と機能のタンパク質工学的研究
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02680159
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
谷澤 克行 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (20133134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 俊郎 大阪大学産業科学研究所, 教授 (90029843)
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Keywords | ロイシン脱水素酵素 / 耐熱性酵素 / 化学修飾 / ピリドキサル5'ーリン酸 / 活性部位 / リジン残基 / 部位特異的変異導入 |
Research Abstract |
平成2年度(初年度)では,本研究代表者らがすでに遺伝子のクロ-ン化と大腸菌内での大量発現に成功している中等度好熱性細菌Bacillus stearothemophilusの耐熱性ロイシン脱水素酵素を研究対象とした。タンパク質中の反応性に富むリジン残基のアミノ基の化学修飾剤として有効なピリドキサル5'ーリン酸を用いて,ロイシン脱水素酵素の修飾実験を行ったところ,本酵素は速やかに失活し、その失活に伴って酵素タンパク質中に2〜3分子のピリドキサル5'ーリン酸が取り込まれた。修飾した酵素タンパク質をトリプシンにより消化し、ピリドキシルリジンに由来する蛍光を指標として、高速液体クロマトグラフィ-により標識ペプチドを単離した。一方、基質や補酵素NADHはピリドキサル5'ーリン酸による失活から本酵素をほぼ完全に保護したので、活性部位(基質結合部位)近傍には反応性に富むリジン残基が存在することが予想された。タンパク質シ-ケンサ-により,単離した標識ペプチドのアミノ酸配列を解析した結果、ロイシン脱水素酵素の全一次構造中の80番目に位置するリジン残基がピリドキサル5'ーリン酸により修飾される、すなわち活性中心近傍に存在するリジン残基であることが判明した。このリジンー80へのピリドキサル5'ーリン酸の取り込みは、基質やNADHの存在で特異的に抑制された。次いで,部位特異的変異導入の手法を用いて、このリジン残基をアラニン残基に置換した変異型酵素を作成した。この変異型酵素の比活性はもとの野生型酵素のそれの3%以下であり、リジンー80が本酵素活性発現に重要な役割を果していることが予想された。また,興味深いことに反応の最適pHは、変異型酵素において野生型酵素に比べて1以上アルカリ側にシフトしており、リジンー80のεーアミノ基の解離状態が触媒過程に密接に関連していることも判明した。現在、変異型ロイシン脱水素酵素の反応速度論的解析を行っているところである。
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