1992 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02801024
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Research Institution | National Institute for Educational Research |
Principal Investigator |
上野 直樹 国立教育研究所, 教育指導研究部, 主任研究官 (40124177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂呂 雄二 国立国語研究所, 言語教育研究部, 研究員 (50157939)
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Keywords | 学校の言語ゲーム / 授業の談話分析 / 算数問題の現実性 / 日常認知 |
Research Abstract |
平成2年度からの3年間の科研費による研究において、学校における算数に関する“言語ゲーム"のあり方に調査、実験を行った。その結果、多くの小学生が、意味のない算数の問題を何ら疑問なくといてしまうこと、あるいは、非現実的な問題に「これは算数の問題だから変ではない、解ける。」と答えることなどが示された。以上の調査から、小学生は、与えられた問題の現実性・意味についてモニターしないこと、算数理解のあり方が手続き指向的であること、算数の問題は「算数」である以上、現実的である必要はないと積極的に判断していること、などが明らかになった。こうした諸事実は、学校の算数が何を指向しているか、つまり算数という「ゲーム」が学校においてどの様な運営のされ方をしているかを示している。 さらに、申請者がトヨタ財団研究助成によって行っているネパールにおける日常生活における算数の調査によれば、商人や農民の算数という「ゲーム」のあり方は、以上に示される様な学校算数と対照的である。例えば、「水牛1頭18円で3頭でいくら」というような非現実的な問題に皆笑いだす。また、ネパールの商人や農民の算数の問題解決は、協同的である。例えば、個人に、問題を与えてみても、自然と人が集まり、互いにいろいろ数えあったり、計算に関してコメントすることが頻繁にあった。つまり、ネパールの人々にとっては、個人的に算数の問題を解くこと自体がむしろ不自然な事態であると考えられる。さらに、そのストリート算数の背景に、歴史的に構築されてきた様々な手続き、道具があり、そうした算数の道具が学校とは異なった形で発展し、又洗練されていることが明らかにされた。 以上の事実から、算数認知は、特定の活動のコミュニティ(学校・バザール等)に参加し、メンバーとして文化・歴史的状況との相互交渉を行うことを通して社会的に構成されるものであることが明らかにされた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 上野 直樹: "状況的認知" 児童心理学の進歩. 30. 283-321 (1991)
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[Publications] 上野 直樹: "状況的認知と言語ゲーム" 教育学研究. 59. 40-44 (1992)
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[Publications] 上野 直樹: "メタファーの心理学 第5章 数学のメタファーと学校の言語ゲーム" 誠信書房, 127-158 (1990)