1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02801042
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
小林 忠雄 国立歴史民俗博物館, 民俗研究部, 助教授 (00215336)
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Keywords | 染色技術 / 色の象徴物 / 色彩環境 / 都市の色彩特徴 / 呪術玩具 / 多色傾色 |
Research Abstract |
本年度は日本の伝統都市を中心としたフィ-ルドにおける色彩に関する民俗伝承の聞き書きと、文献資料および実物の写真撮影等の調査を実施した。また、都市以外の特に山村における染色技術の伝承にも触れる機会があり、基礎的資料として記録した。 本年度予定した都市は弘前市・那覇市・高知市・会津若松市の4か所であるが、その他奈良市あるいは白山麓、能登半島の一部においても若干ではあるが民俗的な色の象徴物を調査することが出来た。 ちなみに、調査結果をまだ充分に検討していないので、早急に明確なことは述べられないが、全体の傾向としてそれぞれの伝統都市における色彩の特徴を示す事例は鮮明ではなく、当初考えていた各都市の地域的特色を抽出する作業はいささか困難となった。しかし、都市と田舎との差異は明確であり、民俗として使われる彩色の基本原理は都市社会によって生み出されてきた傾向が、今のところ窺われる。 例えば藍色は自製することなく、マチの紺屋によって染色されることが多い。従って商家の暖簾やハッピ、幟穂、着物といった染色は紺屋が一手に引き受けていて、そのことが都市社会における藍色の色彩環境を特徴づける傾向を生み出してきたように考えられる。 また、紅花染についても、その染料の入手が普通には困難であるため、紺屋の専業仕事といっても過言ではなく、都市の色彩特徴を生み出す原材料とみなしてもよいであろう。 その他、郷土玩具に表された彩色傾向も調査したが、玩具における呪術性が顕著なほど彩色が単純であり、例えば白と黒とか赤一色とか、黄色と黒色の組合せが特徴づけられるが、呪術玩具から遊戯玩具および飾り物玩具(鑑賞用玩具)へと変遷するに従い、多色傾向が顕著であることが判明した。これらの理由については今後研究してゆきたい。
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