1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02807160
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
馬場 俊吉 日本医科大学, 医学部, 助教授 (60089761)
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Keywords | 聴性脳幹反応(ABR) / 温度眼振反応 / 脳幹機能 |
Research Abstract |
意識障害者に対して聴性脳幹反応(ABR)と温度眼振反応の観察を行ない、両反応から脳幹機能を把握しようとするものである。両検査とも意識障害に陥ってから24時間以内に記録を開始し、ABR測定後直ちに温度眼振検査を施行した。症例は男性34例、女性13例の47症例(平均年齢41.3歳)を対象とした。患者の予後経過は回復例14例、植物状態移行例7例、死亡26例と半数以上が予後不良であった。 昏睡に陥ってから24時間以内のABR所見は、正常反応(IーV波間潜時4.4msec以内)29例、IーV波間潜時延長(4.4msec以上)5例、I波のみ1例、無反応12例であった。温度眼振反応には4つの反応が認められた。反応は正常反応(刺激側への眼球の偏位(緩徐相)と反対側への急速な眼球運動(急速相)、眼振様反応(刺激側への眼球の共同偏倚とゆっくりした律動的な眼球の立直り)、偏倚のみ(刺激側への共同偏倚のみで眼球の立直り)、無反応(冷水刺激によって全く眼球運動を認めないもの)であった。結果は正常反応7例、眼振様反応3例、偏倚のみ10例、無反応27例であった。温度眼振反応が無反応であった27症例のABRをみると正常反応11例、IーV波間潜時延長3例、I波のみ1例、無反応12例であった。逆にABRが無反応またはI波のみの症例13例の温度眼振反応をみると全例無反応であった。このことは、温度眼振反応が無反応となり脳幹機能が消失したと思われる症例でもABRのV波が認められる症例が有り、温度眼振反応による脳幹機能の消失が見せかけの機能障害と考えられた。逆に、ABRがI波のみまたは無反応症例の温度眼振反応は全例が無反応であり、脳幹機能が完全に消失したものと考えられた。今後の研究の進めかたであるが両反応を経時的に観察し合せて脳波を記録し脳死の判定にABRが有用か否かの検討を行なう。
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