1991 Fiscal Year Annual Research Report
綱膜電図の新電位(暗所閾値電位,STR)の発生機構の基礎的および臨床的研究
Project/Area Number |
02807162
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
若林 謙二 金沢大学, 医学部附属病院, 講師 (50126629)
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Keywords | 暗所閾値電位 / Scotopic Threshold Response,STR / Miiller細胞 / 眼底白点症 / 無βリポ蛋白血症 |
Research Abstract |
近年網膜電図の新要素として確認された暗所閾値電位(Scotopic threshold response,STR)は杆体系綱膜内層機能の指標として利用できる可能性が高く、STRの種々の網膜疾患への臨床応用がそれらの疾患の病態解明に資すると期待される。本研究においてSTRの記録に適した暗順応絶対閾値近傍の極めて暗い刺激光を得るための全視野刺激ド-ムおよびリモコン式フィルタ-変換装置を備えた刺激光コントロ-ル装置を試作し、さらにERG信号をデジタル処理することによって自動的にア-ティファクト除去を行なうためのソウトウエイを開発した。この装置を用いて1)ウサギおよびカエルにおいてin vivo STRの記録を試み、STRの種差について検討することによりSTRにおけるMuller細胞の関与の可能性を検討した結果カエルおよびウサギではSTRに相当する陰性波は観察されなかった。これまでにSTRを持つことが明らかにされているヒトやネコおよびサルと今回検討を行ったウサギおよびカエルとではMuller細胞のK^+透過性分布が異なりMuller細胞のK^+透過性分布の違いとSTRの有無とが符合することからSTRの発生にMuller細胞が関与している可能性が示唆された。2)眼底白点症および無βリポ蛋白血症においてSTRの所見を検討した。眼底白点症は視物質の再生遅延によって暗順応が延長する疾患であるが、本症の3例において充分な暗順応後のSTRは他の網膜電図(electroretinogram,ERG)成分と同様に正常であり、電気生理学的にも充分な暗順応後の網膜機能が正常であることを示した。無βリポ蛋白血症は血清βリポ蛋白の消失を本態とする常染色体劣性遺伝の疾患であり、本症の1例でSTRは観察されず、ERGa波およびb波も高区に減弱していた。同症例で記録した眼球電位図では異常の程度が原発性網膜色素変性症に比べて軽度であったこととあわせて考えると本症における網膜色素変性症は原発性網膜色素変性症とはその主たる障害の部位が異なる可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 若林 謙二,齋藤 友護,石坂 伸人,瀬川 要司: "Scotopic Threshold Response(STR)を用いた暗所視機能の他覚的検討ー眼底白点症ー" 原生省特定疾患網膜脈絡膜萎縮症調査研究班平成元年度研究報告書. 56-58 (1990)
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[Publications] 若林 謙二,齋藤 友護,石坂 伸人,瀬川 要司,河崎 一夫,堀田 素志,松浦 弘毅: "暗所閾値電位(Scotopic Threshald Response,STR)記録装置の開発" 日本眼科学会雑誌. 95. 92-96 (1991)
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[Publications] 若林 謙二,石坂 伸人,河崎 一夫: "暗所閾値電位(Scotopic Threshold Response,STR)の種差に関する検討" 厚生省特定疾患網膜脈絡膜萎縮症調査研究班平成2年度研究報告書. 171-173 (1991)
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[Publications] 若林 謙二,齋藤 友護,小田 典子,河崎 一夫,八木 邦公,馬渕 宏: "無ベ-タリポプロテイン血症の1例" 厚生省特定疾患網膜脈絡膜萎縮症調査研究班平成2年度研究報告書. 222-224 (1991)