Research Abstract |
ハイドロキシアパタイトなどの人工骨移植は,歯周外科治療によく用いられており,その臨床応用成績は良好である。しかし,これらは骨伝導能は有するものの,骨誘導能はないと考えられている。そこで,生体内で新生骨を積極的に誘導する物質として,骨基質内に存在する骨形成蛋白(BMP)に注目した。しかし,このBMPはその収量が微量であり,生体内で吸収されやすいために,BMPを保持する担体が必要とされる。まずBMPと人工骨移植材であるTrue bone ceramics(TBC)の複合体について,組織学的検討を行った。すなわち,BMPーTBC複合体をラットの背部皮下に移植し,光顕観察を行ったところ,2ー3週後では新生骨の形成が認められた。なお対照としてのTBCでは新生骨の形成はみられなかった。そこで,本研究ではより効率的に骨形成を促進させるために,BMPとTBCとの複合方法について検討を行った。複合方法として次の4方法を用いた。(1)BMPを蒸留水中にけんだくし,TBCを浸漬し,凍結乾燥。(2)BMPを4M塩酸グアニジン溶液に溶解し,TBCを浸漬し,TBC中にBMP溶液を浸透。凍結乾燥によりTBC表面と内部にBMPを吸着。(3)BMPを4M塩酸グアニジン溶液に溶解し,TBCを浸漬。透析チュ-ブ内で蒸留水に透析後,凍結乾燥。(4)対照として,TBCのみ。これらを,ラット頭蓋骨に形成した骨欠損内に移植し,3日,1週後に屠殺し,試料を採取した。光顕標本はホルマリン固定,EDTA脱灰,パラフィン包埋,HE染色した。光顕観察の結果,BMPを蒸留水中にけんだくし,TBCを浸漬したものよりも,4M塩酸グアニジン溶液に溶解し,TBCを浸漬したものの方が,新生線維の形成ははやく,さらに骨様構造物の形成も多い傾向が認められた。今後,組織化学的方法および細胞化学的方法を用いて,初期石灰化過程の解明を検討するとともに,超微形態学的にも骨生成過程を明らかにする。
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