2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00001
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
堀池 信夫 筑波大学, 哲学思想学系, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHIN Hyeon 筑波大学, 哲学・思想学系, 外国人特別研究員
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Keywords | 漢代易学 / 漢易 / 易 / 鄭玄 / 象数易 / 後漢易学 / 周礼 / 経学 |
Research Abstract |
2002年度に引き続き、2003年度では鄭玄易学に見られる経学観について研究を進めた。2002年度での研究成果は、鄭玄易学がもっぱら卦画の象数的原理を追求し、経・伝の言辞を重要視しなかった前漢易学と、易伝の言辞重視による後漢以降の解釈志向との統一、すなわち卦画における象数的理論を卦爻辞の言説に結合させるという、課題の解決を目指すものであったことを明らかにした。そこで、2003年度一年間においては、鄭玄の『周礼』を中心とする経学観において『易』はどのような位置を占めており、その意味をいかなるものであったのかについて研究を行った。その結果、以下のような結論が得られた。 易学における鄭玄の解釈法は、その原義を卦象に求め、次いで拠伝解経があり、そしてさらにそれを礼説、とりわけ『周礼』の文に結びつける、そのような態様をもつものであった。鄭玄が易解釈においてそれを『周礼』の説に結びつけているのは、彼の「周礼体系」を骨幹とする礼教世界観を反映したものと考えられる。鄭玄のこの「周礼体系」は、単に人間社会を対象とする五礼的礼教世界に止まるものではなかった。それは経書の五礼世界の根源に「天神の言語」たる「図書」を置き、それを媒介にして人間の礼教世界を天神世界につらなるものと捉えるものであった。そして、このような「天神」から「人事」へ、あるいは「人事」から「天神」へという回路こそ、まさに彼の『易』の解釈法に反映しているものであった。すなわち、鄭玄は「互体」「爻体」「爻辰」の象数的技法によって抽出する天神言語たる「八卦」を媒介として、人間言語の「伝」による「経」の解釈に進み、そこからさらに五礼世界の核たる『周礼』へといった解釈経路を見出したのである。 従来の研究は、鄭玄易学に見られる様々な技法や特徴を断片的に指摘するに止まっており、それらの技法が最も鮮やかに実を結ぶ解経経踏の実相については、すべて網目からこぼれ落ちていた。 鄭玄易注においては、互体や爻体などの象数的技法と、費氏的拠伝解経法とが見事に統一されていたが、それは易学史的側面からすれば、前漢易学において残されていた課題の解決、すなわち卦画と卦爻辞の統一的解釈を果たしたものであった。そしてそれはそこにとどまらず、彼の周礼体系に結合し、彼の経学における一つの重要な核となっていた。すなわち、彼が用いた「象数的技法」と「拠伝解経法」は、単に都合に合わせて結合利用したものではなく、象数的技法(互体・爻体など)によって天神言語たる図(八卦)を見出し、それを拠伝解経法による人間言語へと繋げ、さらに礼教世界の経礼にあたる『周礼』へという展開を示す、壮大な構想のもとに考え出された方法であったのである。 ※本研究の成果は『東方学』第107輯(2004.1)に掲載されている。
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Research Products
(1 results)