2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
御牧 克己 京都大学, 文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHEN Weirong 京都大学, 文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 禅定灯明論 / 瞑想階梯 / チベット / ニンマ派 / 漸門派 / 頓門派 / 大ヨガ / ゾクチェン |
Research Abstract |
「インド・中国・チベットの瞑想階梯の研究」と題した本研究は、具体的には9〜10世紀のチベット仏教ニンマ派の論師ヌプチェン・サンギェイェシェ(gNubs chen Sans rgyas ye ses)の著作である『禅定灯明論』(bSam gtan mig sgron)の読解、英訳注作成を中心として、当時のチベットに伝わっていたインドの中観思想、中国の禅思想、その統合昇華としてのチベットの大ヨガやゾクチェン(大成就)思想を総合的に解明することを目的とする。 『禅定灯明論』の主要部分は、漸門派章、頓門派章、大ヨガ章、ゾクチェン(大成就)章という四章からなり、順次瞑想のレベルの低い段階からより高次の段階へ移る過程を示している。平成14年度は顕教的な漸門派章から着手し、定期的研究会(少なくとも週1回)での討論を積み重ねることによってチベット語テクストの批判的校訂本と英訳注のドラフトを完成させることが出来た。また、同章中に引用される典拠の同定を通じて多くの新しい知見を明らかにすることができた。例えばヌプチェン・サンギェイェシェは同章を著述するに当ってインドの思想家カマラシーラ(740-795年頃)の「修習次第」三篇に拠っていると述べているが、両論を詳細に比較すると、『禅定灯明論』の顕教の修行体系と『修習次第』の修行体系との間にはかなりの隔たりのあることが明らかになった。また、『禅定灯明論』同章の記述する108の夢の分析の個所は、『大宝積経』4「浄居天子会(菩薩説夢経)」(大正蔵経11巻No.310-4;北京版西蔵大蔵経22巻No.760-4)を典拠としているが、『禅定灯明論』の割り注(mchan)の説明の不明瞭な個所も、『大宝積経』の記述と丹念に比較することにより、かなりの修正を施しながらではあるがある程度正確に読むことが出来ることが判明した。従って、『大宝積経』「浄居天子会」の蔵漢対照批判的校訂本の作成も本研究の一環として不可欠であるとの結論に達し着手した。
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