2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00012
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉田 順一 早稲田大学, 文学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BURENSAIN 早稲田大学, 文学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 内モンゴル自治区 / 阿魯科爾沁旗 / 農地化 / モンゴル遊牧社会 / 満洲国 / 興安嶺山脈 |
Research Abstract |
本年度は主に次の三点に沿って研究を実行してきた。まず、研究の対象地域である中国内モンゴル自治区の赤峰市(旧昭烏達盟)阿魯科爾沁旗に対する今までの研究、具体的に言えば研究代表者が1995年に当地域で行った実態調査及び、研究分担者が1999年と2001年に行った調査データを分析し、研究の出発点を定めた。 次に、7月から8月にかけて両名が調査対象地域の阿魯科爾沁旗で10日間に渡る実態調査を実施した。調査の重点は1939年(満洲国康徳6年)に調査された旧ハラトクチン村(現在のバヤンボラク・ガチャー)に対して牧畜や社会動態に関して詳細な調査を施した。また旗档案館や政府の関係部署との関わりの中でも当研究をより立体的に進めるためのデータを入手した。内モンゴルおよび中国における関連文献資料の収集も行った。 9月以後は、実態調査で得られてきたデータや文献資料の分析に着手した。その結果主に次のことが明らかにできた。 内モンゴル東部地域では、中国内地からの入植者による農地化や漢化の波が押し寄せ、漢人居住地域に近いところでは20世紀の前半までにステップの耕地化が実現し、20世紀の後半から現在に至るまで興安嶺山脈を挟んで農業化あるいは半農半牧化の波とモンゴルの伝統的な牧畜との攻防が続いている。その中にあって20世紀の後半までバヤンウンドゥル地域で行われていたモンゴル人の狩猟などは、いま殆ど見られなくなったモンゴル遊牧民の伝統的な遊牧社会における牧畜と狩猟の関係を考える上で重要なデータとなりうると思われる。また近年まで続けられていた季節的な牧地の利用の実態についても調査し、興安嶺山脈以南の地における伝統的遊牧の一端を知ることができたし、夏営地が絡む近隣地域との関係についても、興味ある事実を知ることができた。その他第二次大戦後から現在に至る、社会・経済の全般にわたる種々のデータを得ることができた。
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