2003 Fiscal Year Annual Research Report
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02F00020
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
米澤 康博 横浜国立大学, 経営学部・文部教官, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
GUNARATNE Paddiperuma. S. M. 横浜国立大学, 経営学部, 外国人特別研究員
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Keywords | バブル / 金融の自由化 / 高度成長の終焉 / ITバブル / 行動ファイナンス |
Research Abstract |
本年度は「経済成長、金融革新(自由化)と資産価格変動」との関係を中心に研究した。以下、そこで整理された点を要約する。 (1)日本経済を1970年代と1980年代とに分けて分析すると、名目経済成長率は大きく13.3%から6.3%にダウンしたにもかかわらず、金融資産残高成長率は低下せず、結果として(金融資産/GDP)比率を見ると70年代の4.2%成長から80年代には7.2%成長に増加している。要するに80年代に入ってGDPの成長率が下がったため、GDP比率で見る金融資産は大きく増加したのである。 (2)この過程で家計、企業は取引動機に基づく銀行預金保有の過剰に気づき、それを他の収益率の高い金融資産、あるいは土地に徐々にシフトさせることになった。シフト後の新均衡では株式を中心とした金融資産の価格は上昇し、その期待収益率は低くなる。これがバブルの発生原因の一つと考えられる。要するに原因は高度成長の終焉である。 (3)家計、企業が合理的ならばGDP成長率の低下によって株式、土地の収益は低下し、株価、地価の高騰は調整過程の一時的なものであったはずであるが、収益性に関しては高度成長の期待が続いており、極めて非合理的であったと推測される。これがバブルを発生させた後、しばらく維持させた原因と思われる。 (4)問題はこの非合理的な要因もさることながら、この間、銀行預金と株式との間にミドル・リスク-ミドル・リターンの金融商品が提供されていなかったことである。これが十分に供給されていれば株式等へのシフトは部分的であり、バブルの発生もより限定的なものであったと推測される。このような資産の候補としては株式、債券の投資信託であるが当時それらは効率的に運用されておらず、決して期待される成果をもたらしていなかった。 (5)また1980年代における金融自由化政策も適当でなかった。80年代後半に北欧等では同じように土地等を中心とした資産バブルが生じていたが、それは金融の自由化によって家計への金融機関融資が増え、その融資によって家計が土地を購入した結果、生じたと解釈されている。それに対してわが国での同じ目的で設立された住宅専門金融機関は専ら企業への融資を行い、企業が土地を購入し、バブルを助長した。バブルを助長した点はどちらの政策も同じであるが、少なくとも企業にさらなる融資を行う金融機関を作る必要は全くなかったと考えられる。家計への融資が本格化したのはつい最近のことであり、この点からも金融自由化が家計のために行われてこなかったことがわかろう。 (6)アメリカのITバブルはわが国のあるいは北欧のバブルとは決定的に異なった原因から発生したと考えられる。それは投資家全体がIT革命、およびその成果に対して過信し、その結果、リスクを低く見積もりすぎたことによって生じたと理解するのが最も納得的と思われる。これは「過信」と言う行動ファイナンスの視点から十分に分析可能である。
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