Research Abstract |
MEMS,マイクロセンサ分野での重要性から,圧電材料の研究が近年活発に行われている.多くの表面波(SAW)デバイスやセンサでは,特性向上のために,圧電材料を基材の上に積層して作製している.しかしながら,熱膨張係数の違い,圧電材料の脆性,不純物,空孔,微小き裂の存在により,圧電材料中には初期応力が存在する.そして,機械的・電気的負荷が作用した場合,デバイスの破損を容易に引き起こしてしまうといった問題がある.このような背景から,初期応力が作用した状態での,表面波(Rayleigh wave, Love wave and Bleustein-Gulyaev等)の特性評価ならびに積層界面が及ぼす表面波特性への影響について検討する必要がある.そして,積層型SAWセンサの信頼性評価手法を確立することが重要である.そこで,本研究では,表面波特性の理論的解析を行い,工学的応用への可能性を検討することを目的とする. 今年度の研究では,以下の点を明らかにした. 1)極性の異なる圧電膜層と母材からなる圧電積層構造について,初期応力がBleustein-Gulyaev波に及ぼす影響について検討した.そして,初期応力が100Mpaを越えると,位相速度が急激に低下し,それに伴い,電気-機械的相乗効果係数が急激に増大することが明らかになった. 2)圧電層と弾性母材間の界面における接合状態を考慮して,Love波の進展特性について検討した.その結果,界面の接合状態が不完全になると,それに応じて,Love波の位相速度が変化することが明らかになった. 3)周期的に圧電材を積層した多層構造体におけるSH波の進展挙動について検討した.そして,波の進行方向が積層方向に水平な場合と垂直な場合,両方の場合についてSH波の分散方程式を得た.このような構造によるフィルター効果,圧電材と母材との体積係数・せん断剛性の比が位相速度に及ぼす影響について検討した.
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