2002 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉心溶融事故に伴う蒸気爆発の機構論モデルによる研究
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02F00121
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 芳明 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LIU Jie 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 蒸気爆発 / 機械的エネルギー変換効率 / 細粒化 / 数値解析 / 圧力波 / 原子炉 / 過酷事故 / 混相流 |
Research Abstract |
原子炉の仮想的な過酷事故においては、炉心が溶融することも想定される。そして、高温の溶融炉心が低温の冷却水に接する場合に、蒸気爆発が生じる恐れがある。蒸気爆発によって大きな機械的エネルギーが放出されると、格納容器破損に至り、放射性物質の環境への放出が生じる。しかしながら、蒸気爆発の基礎的なメカニズムについては、まだ十分に解明されていない。 蒸気爆発では、冷却水中に分散した溶融物液滴が細粒化することにより伝熱面積が増え、そのため急激な蒸気発生が生じると考えられる。そこで、これまでの研究で、溶融物液滴の細粒化過程の解析をおこない、実験で撮影された画像との良い一致を得た。そこで本研究では、この溶融物液滴細粒化過程を、独自に開発した1次元混相流解析コードの組み込み、機械的エネルギー変換効率の評価をおこなった。 初期条件として微小領域の細粒化を仮定し、そこから圧力波が伝播する解析をおこなった。溶融物液滴と冷却水が混合された領域を圧力波が伝播することで、溶融物液滴が細粒化され、これによって圧力波が増幅される。液滴細粒化のメカニズムとして、流体力学的細粒化と熱的細粒化の2種類を考慮した。特に、熱的細粒化については、研究代表者らの従来の研究で明らかになったメカニズムである。 圧力波の伝播、増幅によって、溶融物が初期に保持する熱的エネルギーが機械的エネルギーに変換される。そこでこの変換効率を評価した。大規模な蒸気爆発では、流体力学的細粒化が支配的であると考えられ、その場合の機械的エネルギー変換効率は1%未満であった。熱的細粒化が付随する場合でも、この変換効率に大きな違いはなかった。 本研究により、蒸気爆発における機械的エネルギー変換効率は1%未満であり、効率1%を用いて蒸気爆発による安全性を評価することができることが分かった。これは、原子炉の過酷事故の安全性評価に対して極めて重要な知見である。
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[Publications] Jie Liu: "Relationship between the structure of vapor explosion and fragmentation mechanisms"Nucl. Eng. Des.. 216. 121-137 (2002)
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[Publications] Jie Liu: "Numerical analysis of energy conversion ratio in vapor explosions based on different fragmentation mechanisms"Prof. Int. Cong. Advanced Nuclear Power Plants. No.1021 (2002)