2002 Fiscal Year Annual Research Report
次世代型長寿命人工膝関節の開発のための疲労摩耗抑制に関する研究
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02F00128
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村上 輝夫 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHO CHANG HEE 九州大学, 大学院・工学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | 人工膝関節 / 超高分子量ポリエチレン / 塑性流動 / ネジ穴 / 摩耗 / デラミネーション / 膝関節シミュレータ / 有限要素法 |
Research Abstract |
臨床用人工膝関節の摩擦面は金属またはセラミック製の大腿部と超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)製の脛骨部から構成されているため,UHMWPEの疲労摩耗が大きな問題となっている.より長寿命の次世代型人工膝関節の開発のための研究の第1段階として今年度中には,UHMWPE脛骨コンポーネントの耐摩耗性の向上のための設計基準の提案を目指して,人工膝関節の脛骨金属ベースにおけるネジ穴の存在によって発生する塑性流動(cold flow)がUHMWPE脛骨コンポーネントの摩耗に及ぼす影響について実験および解析的方法で検討を行った.本研究では,人間の歩行運動条件および生体内環境を模擬できる膝関節シミュレータを用いて100万サイクル以上の長期間にわたるUHMWPE脛骨コンポーネントの摩耗実験を行った.さらに,脛骨金属ベースにネジ穴を有している人工膝関節とネジ穴のない人工膝関節の2種類の単純化した有限要素接触モデルを作成し,有限要素法(FEM)による摩耗実験の数値解析シミュレーションを行い,両モデルでのUHMWPE脛骨コンポーネントの力学的状態を比較検討した. 摩耗実験の結果,脛骨金属ベースにネジ穴を有している組合せのUHMWPE脛骨コンポーネントの背面では,短期間の繰返し接触だけでも顕著なcold flowが発生した.さらに,ネジ穴の中へのcold flowが発生した部分の背面の接触面では,他の接触部に比べて顕著な塑性変形と摩耗の発生が観察された.特に,ネジ穴付近のUHMWPE脛骨コンポーネントの接触面では,その表面直下でデラミネーション(疲労性はく離摩耗)発生の原因となる内部クラックが観察された.また,摩耗実験の有限要素シミュレーションの結果,ネジ穴の中へのcold flowが発生した部分では,底面から表面にかけて局所的な過大応力や高塑性ひずみが発生することが確認された.このようなネジ穴付近でのcold flow発生による応力状態は,UHMWPE脛骨コンポーネントの表面および表面直下での摩耗挙動に悪影響を与え,その摩耗発生の加速化や摩耗量の増加につながると推測される. 本研究では,人工膝関節のUHMWPE脛骨コンポーネントの背面で多く観察されるcold flowの発生を摩耗実験および有限要素シミュレーションにより再現できた.またネジ穴の中へのcold flowの発生が,その背面の表面直下でのデラミネーション発生や摩耗量の増加に関連することが示唆された.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Changhee Cho: "Influence of Plastic Strain on the Fatigue Wear of UHMWPE in Knee Protheses"Proceedings CD of the 4th World Congress of Biomechanics. (印刷中). (2002)
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[Publications] 趙 昌熙: "人工膝関節の脛骨金属ベースのネジ穴がUHMWPEの摩耗に及ぼす影響"日本機械学会2002年度年次大会講演論文集. I. 65-66 (2002)
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[Publications] 趙 昌熙: "UHMWPE脛骨コンポーネントの摩耗挙動に及ぼす組成流動の影響"第29回日本臨床バイオメカニクス学会予稿集. 86 (2002)
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[Publications] 趙 昌熙: "人工膝関節用UHMWPEにおける塑性流動現象の考察"日本機械学会第15回バイオエンジニアリング講演会講演論文集. 259-260 (2003)
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[Publications] 趙 昌熙: "UHMWPE脛骨コンポーネントの摩耗挙動に及ぼす塑性流動の影響"日本臨床バイオメカニクス学会誌. 24(発表予定). (2003)