Research Abstract |
本研究はホール輸送性かつ蛍光量子収率の高いフルオレンを有するポリマーの合成および有機EL素子への応用を行った。ポリマー主鎖中へのアリールアミン基の導入によりホール輸送性を与え、フェニル、ナフチル、アントラセン、ピレン、ペリレン、あるいはベンゾチアゾル基を側鎖に導入することにより発光色を調整した。アリールアミン基の導入によりポリマー主鎖のねじれによるπ共役長の制御も行った。パラジウム触媒を用いたHartwig-Buchwaldとスズキカップリング反応を用い、poly[N-phenylimino(9,9,9',9',9",9"-hexaoctyl-2,2';7',2"-terfluorenyl-7,7"-ylene)](PPITF)、Poly{N-phenylimino[(10-(9,9-dioctyl-9H-fluoren-2-yl)-anthracen-9-yl)-9,9-dioctyl-9H-fluoren-2-yl-7,7-ylene]}(PPIFAF)、poly[N-naphthalen-1-ylimino(9,9,9',9',9",9"-hexaoctyl-2,2';7',2"-terfluorenyl-7,7"-ylene)](PNITF)、poly[N-anthracen-2-ylimino(9,9,9',9',9",9"-hexaoctyl-2,2';7',2"-terfluorenyl-7,7"-ylene)](PAITF)、poly[N-pyren-1-ylimino(9,9,9',9',9",9"-hexaoctyl-2,2';7',2"-terfluorenyl-7,7"-ylene)](PPYITF)、poly[N-perylen-3-ylimino(9,9,9',9',9",9"-hexaoctyl-2,2';7',2"-terfluorenyl-7,7"-ylene)](PPRITF)、poly[N-4-(6-methyl-benzothiazol-2-yl)-phenylimino(9,9,9',9',9",9",-hexaoctyl-2,2';7',2"-terfluorenyl-7,7"-ylene)](PBTITF)などの新規ポリイミノアリーレン誘導体を合成した。大気中光電子分光法によりイオン化ポテンシャル(IP)はいずれも5.5
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-5.7eVであった。これらのポリイミノアリーレン誘導体は、一般的に用いられているホール輸送性材料であるTPDとα-NPDのイオン化ポテンシャルと類似した性質を有していることがわかった。これは主鎖に導入したトリアリールアミン部位が有効に作用したため、ホール輸送性を持つと考えられる。bis-(7-bromo-9,9-dioctylfluoren-2-yl)-4-(6-methyl-benzothiazol-2-yl)-phenyl]-amine(BBDOFBTA)とフルオレンの共重合により、得られたポリマー中のベンゾチアゾル基の含量を調整した。より少ないベンゾチアゾル基の存在により濃度消光を抑え、PBTITFより高い蛍光量子効率とEL外部量子効率が得られた。有機EL素子への応用として、合成したそれぞれのポリマーをホール輸送層に用いホールブロック層としてBCPを用いた二層型素子を作製した。いずれもポリマーからの青色、緑色、あるいは黄色であり、ホール輸送性発光層として機能することがわかった。さらに、より高い電子輸送性のBAlqをホールブロック層として用いた二層型素子を作製した。BAlq層を挿入することによりキャリアバランスがよくなり、それぞれの素子の外部量子効率はBCPを用いた二層型素子よりもそれ以上のものが得られた。これらの特性は導電性ポリマーのPEDOTをホール注入層として挿入し作製した素子と同等のものであった。特に、PNITFを用いた素子は2.02cd/Aの高い電流効率を示し、加熱と電流の流れによるポリフルオレンのようなエキシマー発光が抑えられた。また、ELとPLスペクトルはいずれも438nm付近にピークを有するCIE色度座標(0.170,0.145)において青色発光が観測された。これらの特性はホール注入層を有しポリフルオレンを発光層として用いた素子よりも優れていることがわかった。更に、PNITFをホストとして使い、PPRITFあるいはbi(9,9,9',9'-tetraoctyl-9H,9'H-[2,2']bifluorenyl-7-yl)-perylen-3-yl-amine(BBFPRA)をゲストとして使い様々の素子を作製した。ホストからゲストまでのエネルギー移動をコントロールすることにより、ブレンド層からの青色、白色、緑色、あるいは黄色の発光が得られた。青色発光を有するPNITFはホール輸送性発光層として機能するばかりでなく、ホスト材料を含む幅広く有機ELへの応用が期待できる。 Less
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