2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00142
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
小林 速男 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEE Ha?Jin 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 有機伝導体 / 電子供与体 / 磁性体 / カチオンラジカル塩 / 構造有機化学 / 結晶構造 / 安定有機ラジカル |
Research Abstract |
従来のすべての分子性伝導体は2成分以上の分子(イオン)から構成されている。これはこれまで開発されてきた全ての分子性伝導体において、分子の作る結晶中に伝導電子を発生させるために分子間電荷移動現象を用いてきたからである。しかし2001年に私たちは拡張TTF骨格を持つ配位子を持つ中性分子だけで出来た分子結晶でも、構成分子に幾つかの条件を満足させる事が出来れば、分子が自己集積したときに金属電子が結晶中に自発発生しうることを提案し、実際、初めての単一分子だけで出来た分子性金属を発見した。Ha-Jin Leeさんが日本学術振興会の外国人特別研究員として私の研究室で研究することを希望されたのは丁度この研究が出たあとであり、リーさんはこれまで含硫黄π分子の合成研究を行ってきた経験を持つので、合成的な実験を通して本研究課題を推進して頂く予定とした。しかし、Leeさんの来日直前に研究室の体制を大きく変えねばならない事態となり、研究課題の修正を余儀なくされた。即ちその事態を踏まえて、単一分子性金属系の場合と同様に、拡張TTF骨格を持つ類似分子で更に有機安定ラジカル部位を持つ分子を合成し、(1)安定有機ラジカルドナー分子と無機アニオンの組み合わせにより新たな磁性有機伝導体の合成研究を行い、その後、(2)研究課題の単一分子性金属結晶の開発研究を遂行することとした。この計画に従って、まず安定なPROXYLラジカル部位を持つTTPドナー分子,TTP-proxyl,CP-TTP-proxyl(図1)を合成し、電気分解法によって幾つかの新たな磁性伝導体(TTP-proxyl)_nX(n=1,2;X=ClO_4^-,FeCl_4^-,GaCl_4^-)を合成し、その結晶構造決定、伝導性、磁性の測定を行った。特に(TTP-proxyl)_2GaCl_4^-塩ではこれまで例のない高伝導有機安定ラジカル伝導体が得られ,詳細な磁気特性の測定が行われた。また、結晶構造から当初の目的の通り、安定ラジカルπドナー分子により構成された二次元伝導層を持つ、初めての磁性有機伝導体が開発出来たことが判った事は分子正殿導体の開発研究にとって大きな成果であると思われる(投稿準備中)。また高伝導性結晶、(CP-TTP-proxyl)_4AsF_6(投稿中)および2種類のスピン系を内包する初めての有機ラジカル磁性体」、(TTP-proxyl)FeCl_4等の結晶構造決定、物性測定等も遂行された。しかし(2)の研究にまでは至らなかった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Fujiwara, H.Lee, H.Kobayashi, E.Fujiwara, Akiko Kobayashi: "A Novel TTP donor Containing a PROXYL Radical for Magnetic Molecular Conductors"Chem.Lett.. 2003. 482-483 (2003)
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[Publications] H.Lee, H.Cui, H.Fujiwara, H.Kobayashi, E.Fujiwara, A.Kobayashi: "Development of New Magnetic Organic Conductors Based on π Donor Molecules with Stable Organic Radical Part"J.Physique. (In press). (2004)