2002 Fiscal Year Annual Research Report
アパレルデザインに対する素材の力学的性質、風合い評価、仕立て映え評価の応用
Project/Area Number |
02F00186
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
米田 守宏 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
孫 珠煕 奈良女子大学, 生活環境学部, 外国人特別研究員
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Keywords | デザインイメージ / シルエット / 力学的性質 / ブラウス / 視覚評定 / 仮想縫製システム / エレガント性 |
Research Abstract |
今年度は、アパレルデザインにおける素材の力学的性質の応用へのアプローチのしかたとして、次の二通りのアプローチで行った。 第一に、衣服形態におけるブラウスのデザインイメージとその素材の力学的性質の関連について、実物のブラウスを用いて視覚評定に関する官能試験を行い、その結果と素材の力学的性質との関連について検討した。第二に、高性能パーソナルコンピュータに仮想縫製システム・ソフトウェアを導入し、仮想縫製システムを用いて生成した衣服のシルエット画像を試料として、視覚評定に関する官能試験を行い、布の力学特性との関連について検討した。 第一のアプローチである、実物のブラウスを用いた研究について述べる。これまで研究を行ってきたブラウス素材の中から色柄の影響を取り除くため白色素材17種を選び、力学特性を測定し、同時にブラウスを作製した。作製したブラウス17種を用いてデザインイメージに関する視覚評定の官能試験を実施した。被験者は女子学生59名、デザインイメージに関する形容語として12対の形容語を選び、SD法を用いて7段階評価を行い、数量化のうえ相関分析、因子分析、クラスタ分析の手法を用いて結果について解析した。相関分析の結果、「高級な-安っぽい」「エレガントな-スポーティーな」「アダルトな-ヤングな」「上品な-下品な」の質問項目が、力学特性の引張り、剪断、曲げ、圧縮、摩擦の諸特性と深く関連がみられた。因子分析の結果では、デザインイメージの「エレガント性」は力学的特性と深い関連がみられたが、「装飾性」と「ファッション性」は力学的性質とあまり関連がみられなかった。クラスタ分析の結果では、素材特性およの組み合わせによる4つのクラスタが得られた。得られた4つのクラスタの力学特性における特徴を検討した結果、引張り、曲げ、圧縮の諸特性において差異がみられた。最後に、ブラウスにおけるデザインイメージと力学特性の関係のしかたは、素材(布)レベルにおけるデザインイメージと力学特性の関係のしかたと異なっていた。このことは素材レベルと衣服形態(ブラウス)レベルにおいて、視覚評定の評価機構が異なっていることを示唆している。 第2のアプローチである、仮想縫製システムを用いて生成した衣服シルエットを用いた画像による官能試験について述べる。型紙が一定という条件のもとで、実測した力学特性値を用いて計算によりシルエットを生成しデザインイメージに関する視覚評定の官能試験を行い、第一のアプローチの結果である、実物のブラウスおよび素材(布)レベルのシルエットにおけるの結果との対応関係について比較検討した。得られた結果は次の通りである。仮想縫製システムによって生成されたブラウスシルエットは、クラスタ分析により「エレガント」と「スポーティー」の二つのクラスタに分類された。デザインイメージの「エレガント性」は力学特性と深い関連がみられた「エレガントースポーティー」因子に対する平均得点を、画像、実物のブラウスおよび素材レベルで比較した結果、シンプルなシャツスタイルのグループでは3者の間で、デザインイメージの視覚評価のしかたが一致していた。画像シルエットの視覚評価においては、布の力学特性による直接的な影響が認められた。 以上を総括すると、第一のアプローチによる研究の結果より、デザインプロセスにおける力学特性の利用に関する基礎的知見が得られた。第二のアプローチの結果より、デザインイメージと素材の力学特性の研究において、計算機を用いて仮想縫製システムによって生成されたシルエット画像が利用できるという可能性が見出された。なお以上の成果は、学会発表2件、学会誌投稿論2件(日本家政学会誌掲載済1編、審査中1編)、国際学会Proceedings英文論文1編として公表されている。
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Research Products
(1 results)