2003 Fiscal Year Annual Research Report
亜寒帯・森林生態系における空間的および時間的な気候変動と植生動態
Project/Area Number |
02F00192
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原 登志彦 北海道大学, 低温科学研究所, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LASKA Kamil 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
|
Keywords | 寒冷圏陸域 / 亜寒帯林 / 気候変動 / 植生動態 / エネルギー・水循環 / 樹木個体生長 / 大気-植生相互作用モデル |
Research Abstract |
北海道の亜寒帯林の特徴は、林床がササで密に覆われていることである。これまでは、樹木の実生の定着、つまり森林更新にササが及ぼす影響の研究は数多く行われてきた。しかし、ササの存在が上層の樹木の生長動態や森林全体のエネルギー・水循環に及ぼす影響に関しては、ほとんど研究例がない。本研究ではこの点に着目し、林床のササが森林のエネルギー・水循環に及ぼす影響とさらに上層の樹木の生長動態に与える影響の実態解明を行い、モデルの構築を通じて林床にササが存在する北海道の森林が地球環境変化からどのような影響を受けるのかを予測することを目的とした。 北海道大学・雨龍地方研究林のダケカンバ純林と針広混交林(トドマツ、ダケカンバ等)で調査を行った。これらの林床は、チシマザサ等で密に覆われている。気象観測装置等を設置して、放射、気温、湿度、降水量、風速、土壌水分、蒸発散量(ササおよび上層木)、樹液流(ササおよび上層木)等の連続観測を行った。樹木の毎木調査(幹直径、樹高、位置)を行い、25本のサンプル木では幹直径の自動計測を季節を通じて行った。本外国人特別研究員は、平成15年11月15日に帰国したが、11月6日まで上記の観測を続けていた。したがって、現時点では、データの詳細な解析はまだ完了していない。しかし、予備的なデータ解析から、土壌水分に対する競争を通じてササの存在は上層木の生長速度を低下させていることや、ササからの蒸発散量は森林全体の蒸発散量のうち無視できないほどの割合を占めていることなどがわかりつつある。今後速やかにデータ解析を終了し、それらの解析結果をもとにササの存在が上層の樹木の生長動態や森林全体のエネルギー・水循環に及ぼす影響を定量的に解明する予定である。さらに、以上のプロセスをモデル化し、ササが存在する北海道の森林に及ぼす地球環境変化の影響の将来予測も行いたい。
|