2002 Fiscal Year Annual Research Report
DHラインを利用した作物の冠水耐性および酸性土壌耐性の生理生態学および分子生物学的研究
Project/Area Number |
02F00208
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 茂紀 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
張 国平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 冠水耐性 / オオムギ / 品種間差 / 光合成 / 抗酸化酵素 |
Research Abstract |
14年度は9月に来日し半年間の研究を行った.このため成果発表はまだ行っていないが,有意義な成果が得られつつある.オオムギは,ビール加工用を中心に中国における重要作物のひとつであるが,しばしば土壌過湿や冠水の被害が発生することから,冠水耐性の高い品種の選抜や育成,ならびに,冠水耐性のメカニズムの解明や遺伝学的解析が必要である.本研究においては,中国で選抜・作出した品種やDHラインを用いて,オオムギの耐湿性に関する生理生態学的研究と分子生物学的解析を目指すが,その手はじめとして14年度においては,中国のオオムギ品種を用いたポット試験により,時期の異なる冠水処理が光合成に及ぼす影響を調べた.その結果,冠水による光合成速度の低下程度は品種によって異なった.miniPAMにより測定したクロロフィル吸光度の低下から,冠水耐性の弱い品種では光合成系IIに強い障害が生じたと考えられたので,そのメカニズムを解析するため脂質過酸化産物(MDA)や抗酸化酵素(SOD, POD, CAT, GR)の分析も行った.また,気孔コンダクタンスにも低下がみられることから,光合成系IIの障害以外の要因も,冠水による光合成の低下に関与していると考えられる.これらの諸要因については,冠水開始からの時間経過にともない順を追って発生するものと考えられ,詳細を検討している.冠水に強い耐性を示した品種は,冠水中に光合成速度を高く維持していたのみならず,冠水前歴を持たせることで,以後の冠水により強い耐性を示した.また,この耐性品種では,2-3日の冠水処理によって,土壌表層に多数の細い根が現れたことから,冠水による土壌中の酸素濃度低下に発育形態学的にも反応し,より溶存酸素量の多い地表面に根を発達させる機構を備えているものと推察された.
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