2003 Fiscal Year Annual Research Report
膜結合型グルコース脱水素酵素の分子内電子移動の解明とグルコースセンサーへの利用
Project/Area Number |
02F00216
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山田 守 山口大学, 農学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ELIAS MD. 山口大学, 農学部, 外国人特別研究員
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Keywords | グルコース脱水素酵素 / ピロロキノリンキノン / キノプロテイン / セミキノンラジカル |
Research Abstract |
大腸菌の膜結合型グルコース脱水素酵素(mGDH)はピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするキノプロテインの1つであり、呼吸鎖と連結してペリプラズムにおいてグルコースをグルコン酸へと酸化する。mGDHはN末側の疎水領域によって膜と結合し、C末側にPQQやMg2+を含む触媒部位とユビキノン(UQ)との結合部位をもつ。本酵素は単一酵素であることから呼吸鎖初発酵素の最適なモデル酵素と思われる。本研究では、mGDHの分子内電子移動を解析するとともにその知見をグルコースセンサー開発へ利用することを目的としている。 mGDHの分子内電子移動を明らかにするために、電子常磁性共鳴(EPR)解析や阻害剤(ユビキノンアナログ)をもちいた解析を行った。その結果、mGDHの分子内に結合型キノンUQ8の存在が見出された。HPLC解析によってその含有量はmGDH1分子当たり1個であると見積もられた。EPRおよび吸収スペクトル解析によって還元型PQQから結合型キノンへ1電子渡されることが推測された。過剰なユビキノンアナログを用いた処理などによって結合型キノンが比較的強くmGDH分子と結合していることが示唆された。さらに、UQの合成できないubiA変異株からmGDHを精製し、ユビキノンアナログによるキネティクス解析結果を野生株からのmGDHのものと比較した。以上の結果から、mGDHにはPQQの近傍に結合型キノンが存在し、ざらにそれとは異なる蛋白分子表面にバルクのUQが結合していることが示唆された。おそらく還元型PQQからの電子は結合型キノンへ渡され、さらにバルクのUQそしてユビキノールオキシダーゼへと移動すると予想された。 mGDHの結晶化のために濃縮方法を検討し、さらに結晶化条件を検討した。いくつかの条件で小さな結晶が見られた。今後、さらに検討をすすめX線結晶解析が可能な条件を確立する。 mGDHをベースとしたグルコースセンサーを開発することを目的として、グルコース脱水素酵素活性を有する可溶性酵素の構築を試みた。mGDHの触媒活性ドメインとペリプラズム酵素のマルトース結合タンパク質との融合体を遺伝子工学的に作製し、その可溶性画分への回収率を比較した。その結果、可溶性画分へおよそ60%近く回収された。しかしながら活性が大きく減少していた。今後、他のペリプラズム酵素との融合蛋白や活性回復のためのタンパク質工学的改変をすすめる必要がある。一方、基質特異性を高めるために種々の変異処理を行い、グルコースおよびマルトースに対する反応性を検討した。また、基質が結合するPQQの周りに配位するアミノ酸を置換してその基質特異性を調べた。その結果、基質に対する親和性に変化を与える変異体が得られたが、基質特異性には顕著な影響を与える変異は得られなかった。これらの結果、点変異では基質特異性に影響しないように思われる。今後、PCRを用いた変異法などによって隣変異の導入を試みる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] MD.Elias, M.Yamada: "Membrane-bound glucose dehydrogenase in E.coli : Molecular aspects in structure, electron transfer, and evolution of PQQ-containing quinoprotein dehydrogenases"Recent Res.Devel.Biol.Chem.. 1. 319-332 (2003)
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[Publications] M.Yamada, MD.Elias et al.: "Escherichia coli PQQ-containing quinoprotein glucose dehydrogenase : Its structure comparison with other quinoproteins."Biochim.Biophys.Acta.. 1647. 185-192 (2003)
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[Publications] MD.Elias et al.: "Occurrence of a bound ubiquinone and its function in Escherichia coli membrane-bound quinoprotein glucose dehydrogenase"J.Biol.Chem.. 279. 3078-3083 (2004)