2002 Fiscal Year Annual Research Report
火山噴火後の初期植生回復に火山噴出物の諸特性が与える影響に関する研究
Project/Area Number |
02F00219
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
新谷 融 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ADIKARI Yoganath 北海道大学, 大学院・農学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 堆積過程 / ガリーの形成 / 植生被覆 / 傾斜 / 粒径 / 有珠山 / 二次災害 |
Research Abstract |
北海道南部に位置する有珠山の2000年春に発生した噴火では、火山山麓に多数の火口が形成され、周囲には大量の噴出物が堆積し、約71haの森林が荒廃したため、土石流や土砂流出の二次災害の危険性がある。二次災害の発生を予測しコントロールするために噴出物の堆積・侵食(ガリーの形成)過程や、それらに影響を及ぼす植生の役割を調べる必要がある。そこで、堆積過程を明らかにするために堆積物土層の掘削断面調査を行ったところ、火口付近では層理が不明瞭な塊状構造を呈し、火口より下方に離れた区域では、噴出物が重いものから順に堆積する層構造をしていることが明らかになった。荒廃地では表層侵食やガリー侵食が起ったが、ガリーの発達程度は斜面勾配や植生被覆度、堆積物粒径により異なっていた。すなわち緩斜面では急斜面に比べてガリーの規模は小さく、密度も少なかった。ガリーの数や大きさ、下流に運搬される堆積物の移動量は砂質の表層堆積物をもった最急斜面(17°)で最も大きかったが、植生被覆度の高い(最大で35%)斜面では、侵食速度が遅いことから植生が植生に重要な役割を担っていることが明らかになった。また、粘土質の表層堆積物をもった場所では粘土粒子が強く結合しているために、砂質の表層堆積物をもった斜面に比べ堆積物の移動は少なかった。 以上のように、火山噴出物の堆積過程や堆積面表層の粒径サイズ、植生の被覆が被災地における斜面堆積物の移動に重要な役割を担っている可能性が示唆された。この研究成果は堆積物移動予測と二次災害防止のための火山砂防対策技術の構築に役立つものと考えられる。
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