Research Abstract |
近年,日中韓野菜交易問題は経済問題のみならず,国際交流を促進させる上で重要かつ緊急な課題となっている.本研究は,日本,中国及び韓国における主要青果物の生産,加工・流通・輸出諸経費及び海上輸送費等に関わる実態諸費用の把握が必要であり,そのための現地調査が必要となる。平成14年度では,中国の山東省・北京市・山西省を対象地として,中国の野菜生産・流通・積み込み港等における流通経費の実態調査を行い,さらに,日本と中国の地元県の陸揚げ港における海上輸送費の調査を行った。 実態調査データに基づき,輸入関数及び「小売価格均衡関税率モデル」等の計量分析方を用い,日本の野菜輸入の新動向を考察した上で,中国、アメリカ,ニュージーランドからの野菜輸入の決定要因を分析,さらに,日中間の野菜交易の均衡関税率を計量分析した.その結果では,明らかになった点を要約すると以下のようである. 先ず,日本の輸入野菜を形態別でみれば,生鮮野菜の伸び率が最も高い.野菜輸入相手国として中国への集中化,しかも,その背景には,近年中国の野菜生産の発展が大きく関わっていると思われる. 次に,中国,アメリカ,ニュージーランドの野菜輸入量上位国の野菜輸入モデルによる要因分析の結果によると,野菜輸入量に対する,日中の相対価格の影響が,日本とアメリカ,日本とニュージーランドなどとの相対価格の影響が強いため,中国からの輸入野菜の競合性が大きいと考えられる.3カ国からの輸入野菜の代替・補完関係をみれば,アメリカ産野菜は中国産野菜の補完財であり,ニュージーランド産野菜は中国産野菜の代替財であることが指摘できる. 最後に,日中野菜交易の均衡関税率の計測によると,日中ネギの均衡関税率は291%と推計される.これは現行関税率(3%)の約100倍で高くなっているため,現段階で均衡関税率の実施は困難であると考えられる.これに基づいて,日中間における新たな秩序のある貿易体制の構築に関する研究については,今後の課題とした.
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