2003 Fiscal Year Annual Research Report
B中間子稀崩壊、次世代コライダー、ニュートリノ実験における素粒子現象論の研究
Project/Area Number |
02F00304
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
両角 卓也 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
XIONG Zhaohua 広島大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ニュートリノ / CP対称性の破れ / 物質生成 / レプトジェネシス / シーソー模型 |
Research Abstract |
宇宙の物質創成を説明するためには、CP対称性がある程度破れている必要がある。なぜなら、宇宙初期に物質と反物質が同じ量あったとすると、宇宙の進化の過程で、素粒子の相互作用がCP対称性を破っていなければ、現在の宇宙で、なぜ物質の方が反物質より多いかを説明することができないからである。このCP対称性の破れとレプトンのCPの破れがどのように関係しているかを具体的に示したのが本研究である。本研究では、物質創生のメカニズムの中でレプトジェネシスという機構をとりあげて研究した。この機構は、素粒子の標準模型を拡張したシーソー模型に基づいており、標準模型では説明できないニュートリノ質量を自然に説明できる。まず、ニュートリノ振動実験を説明できる最小のシーソー模型をとりあげて研究した。軽いニュートリノ3種類、重い右巻きニュートリノ2種類を含むこの模型は、ニュートリノ振動実験から得られるニュートリノの質量2乗差と3つの混合角を説明するのに十分である。さらに、レプトジェネシスを可能にするCPの破れも含んでいる。この模型に基づいて、物質創生について次のような注目すべき研究成果をあげた。まず、各世代のレプトン非対称性に着目し、全レプトン非対称性に加えて、新たに、世代毎のレプトン非対称性の重要性を指摘した。具体的には、電子型、ミューオン型、タウ型の3つの非対称性を定義し、これら3種類の非対称性の大きさをきめるCPの破れのパラメーターを見出した。このCPの破れのパラメーターを変えることで、どのような割合で電子型、ミューオン型、タウ型レプトンが生成されるかを示した。さらに宇宙初期に生成されたレプトン数非対称性の時間発展を膨張宇宙の下で計算し、現在の物質、反物質非対称性を説明した。この考察を基に、現在の宇宙でなぜ電子数密度とバリオン数密度が同程度であるのか、宇宙のレプトン数のうちニュートリノ背景放射のレプトン非対称性はどのようになっているのか、に関して議論した。これらは、レプトジェネシスの機構を検証する上で重要な問題であり、3種類の非対称性を計算することで初めてこのような議論が可能になったと考えられる。以上、本研究では、物質創生の起源を素粒子の相互作用のCP対称性の破れに起源を求め、特に、レプトジェネシスの機構に基づく物質創生の詳細を素粒子の模型を使って明らかにすることに成功した。
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Research Products
(1 results)