2002 Fiscal Year Annual Research Report
スピングラスとナノ磁性粒子系におけるガラス的振舞い―実験とシミュレーション
Project/Area Number |
02F00309
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高山 一 東京大学, 物性研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JONSSON Petra Erika 東京大学, 物性研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | ナノ磁性粒子系 / 超常磁性 / ブロッキング温度 / エイジング現象 / 温度シフト過程 / 若返り効果 / 磁場シフト過程 / 液滴描像 |
Research Abstract |
ナノサイズ強磁性粒子の磁化反転ダイナミックスは、粒子の磁気異方性で決まるエネルギー障壁を熱活性化過程で乗り越える過程であり、測定時間スケールで決まるブロッキング温度近傍で特徴的なスロー・ダイナミックスを示す(超常磁性)。このようなナノ粒子が多数互いに近距離に閉じ込められた系では、ナノ粒子モーメント間の双極子相互作用が系の磁気的性質を支配し、系全体としてスピングラス的特性、特にガラス的振舞い、を示す。ナノ粒子モーメントの反転に要する時間が、通常のスピングラスの微視的スピンの反転時間スケールに比べて、数桁大きい分だけ、観測される有効時間スケールはシミュレーションで調べられる時間窓に近づく。この点を踏まえて、研究分担者が来日後、まず、Fe-N強磁性ナノ粒子系が示すエイジング現象の関する実験を開始した。複素磁化率を通して、等温エイジング過程、温度シフト過程、温度サイクル過程を調べ、スピングラスドメインの成長則等の測定を行った(本学低温センターのMPMSを利用)。対象としているFe-Nナノ粒子系はスピングラス転移温度と上記のブロッキング温度が近いため、粒子系としてのスピングラス特性と個々の粒子の超常磁性の双方を取り込んだ解析を進め、温度シフト過程に伴う若返り効果が見られない等、上記の予想通り、シミュレーション結果に近い測定結果が得られつつある(磁気国際会議2003に発表申込)。 Fe-N強磁性ナノ粒子系の実験と並行して、イジングスピングラスFe_xMn_(1-x)TiO_3の磁場中エイジング過程の実験も開始した。 後者、磁場中エイジング現象については、シミュレーション側からも新たな成果が得られた。すなわち、スピングラス相に対する液滴描像によると、スピングラスドメインの平均サイズが磁場の値で決まる、ある特性長に達すると、ゼーマンエネルギーがスピングラスの相互作用エネルギーを凌駕し、スピングラス状態が不安定になるものと予想されている。これまでこの動的過程を直接見る実験、シミュレーションは報告されていなかったが、磁場シフトを大きく取るシミュレーションにより、このクロスオーバーを捉えることに初めて成功し(投稿論文準備中)、同様の戦略による実験を開始した。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] P.E.Jonsson, H.Yoshino, P.Nordblad: "Jonsson, Yoshino and Nordblad Reply"Physical Review Letters. 90. 059702 (2003)