2003 Fiscal Year Annual Research Report
3つの酸素同位体比を指標にした海洋の基礎生産の評価
Project/Area Number |
02F00352
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
才野 敏郎 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SHARMA VEDULA VENKATA SUBRAHMANYA SRINIVASA 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 海洋基礎生産 / 大気-海洋ガス交換 / 酸素安定同位体比 |
Research Abstract |
昨年度開発した、酸素3種安定同位体比測定のための新たな試料ガス調製法を用いることによって、高精度で安定に酸素-17Oの同位体比異常が測定できるようになったので、これを外洋および沿岸海水、淡水の試料に適用した。 相模湾の定点において、酸素-17Oの同位体比異常の鉛直分布の日変化を測定した。この結果、17Oの同位体比異常は植物プランクトンの光合成によって生成すること、海洋表層混合層の17O同位体比異常は海洋表面での大気との酸素ガス交換および、混合層下部における亜表層水との混合によって大きな影響を受けることを見出した。大気-海洋ガス交換は海上における風速と良い関係を持つており、風速その他ガス交換係数を推定するのに必要な物理パラメータを測定することによってこの影響は補正できることがわかった。また、混合層下部における亜表層水との混合の影響は、二時間おきに測定した密度の鉛直分布の時系列データと、17Oの同位体比異常の鉛直分布によって補正できた。このようにして補正された海洋表層混合層での植物プランクトンによる総基礎生産を、酸素-18Oラベルした水によるトレーサー法、酸素明暗ビン法、および高速フラッシュ励起蛍光法により実測された総基礎生産と比較した結果よい一致を示した。このことによって、17O同位体比異常法によって、海洋中の総基礎生産を培養実験によらず推定することが可能になった。 石垣島のさんご礁において海水中の17O同位体比異常の2時間おきの時系列観測を実施した。上げ潮時と下げ潮時の17O同位体比異常を比較したところ、上げ潮にはさんご礁外部の海水とほぼ同じ値を示すが、下げ潮時に最低値をとった。下げ潮時の最低値は風速や酸素飽和度に依存しなかった。この原因はさんご礁周辺のリーフエッジにおける砕波でのガス交換と推定された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Sarma, VVSS, O.Abe, T.Saino: "Chromatographic separation of nitrogen, argon, and oxygen in the dissoloved air for determination of triple oxygen isotopes by dual-inlet mass spectrometry."Analytical Chemistry. 75. 4913-4917 (2003)