2002 Fiscal Year Annual Research Report
無機鉱物表面への放射性核種の収着および脱着に関する研究
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02F00395
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
杤山 修 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DU Jin Zhou 東北大学, 大学院・工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 放射性廃棄物 / 地層処分 / 天然バリア / 収着挙動 / 表面キャラクタリゼーション / 原子間力顕微鏡 / シリカ鉱物 / 溶解挙動 |
Research Abstract |
放射性廃棄物地層処分の安全評価では、放射性核種の地圏内の移行を定量化することが重要になる。地層処分では、ガラス固化体、キャニスターおよび緩衝材からなる人工バリアが存在するが、それらの健全性は1000年以上保証し得ない。したがって、それ以降では、地下水の流れに従い核種が移行しても、生態圏に影響を及ぼさないという根拠が必要になる。地下は主に岩石に代表される無機鉱物からなる。地下水の流路を構成するそれら岩石(以下固相と呼称する)と放射性核種との相互作用(収着や脱着)の評価が、核種移行評価に重要となる。本研究では、典型的な岩石試料といくつかの核種との相互作用、固相のキャラクタリゼーション並びに、固相に核種が収着した際の固相表面のキャラクタリゼーションを調べ、不均一な無機鉱物表面への核種の収着および脱着機構を明らかにすることを目的とする。 収着媒体である岩石等は、種々の鉱物からなる混合物であり、金属イオンに対す相互作用の強さの異なる種々のサイトが、異なる反応容量で分布する。一方、地下水は問題となる核種の他、天然の共存イオンを含んでいるので、収着分配は、異なる容量で存在する種々のサイトに対する複数の金属イオンとの競争反応である。したがって、収着媒体そのものの表面キャラクタリゼーションは、収着挙動の定量的把握に重要となる。そこで、本年度は、いくつかの典型的なシリカ鉱物の表面を原子間力顕微鏡(AFM)により観察し、表面の物理的な定量化をナノスケールにおいて行なった。 試料は、天然の石英および雲母であり、比較のために、人工のアモルファスなシリカ(和光純薬製およびマリンクロッド社製)とした。天然鉱物のBET(N_2)面積はほぼ1m^2/gであるのに対し、アモルファスの試料は、400m^2/gであり、AFMでは、後者の表面形状が複雑なものと予想されたが、AFMの数ナノオーダーによる観察では、前者の表面の起伏が大きく、後者は比較的平滑とする結果が得られた。これは、後者の細孔は、AFMにより同定することが困難であることを意味する。一方、石英および雲母の天然鉱物の溶解は緩慢であり、バルクの変化からは、その表面の変化を詳細に捉えることは困難であるが、AFMにより、表面の定量評価ができ、反応に伴う表面の定量評価の可能性が示された。セメントの地下水への一部溶解に伴い、地下水のpHが局所的に13程度まで上昇することから、ケイ酸塩鉱物の溶解過程を定量化は、処分場の長期挙動の予測に重要である。一方、コロイド状のシリカが、ケイ酸塩鉱物に時間をかけて析出することが分かり、その析出表面の変化にもこのAFMは有用であることが本年度の研究結果より示唆された。
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