2003 Fiscal Year Annual Research Report
トマトの葯および花粉におけるポリアミン合成酵素の遺伝子発現および翻訳の環境応答
Project/Area Number |
02F00510
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
橘 昌司 三重大学, 生物資源学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SONG Jianjun 三重大学, 生物資源学部, 外国人特別研究員
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Keywords | トマト / 花粉稔性 / 花粉の寿命 / ポリアミン / ポリアミン合成酵素 / 遺伝子発現 / 高温 |
Research Abstract |
1.トマト蕾の高温遭遇による花粉稔性低下と葯のポリアミン代謝との関係 常温下で発育した葯のポリアミン合成酵素活性と酵素遺伝子の転写および翻訳活性の蕾発育に伴う変化を調べた.ADC活性は開花7〜5日前に高く,その後緩やかに低下したが,SAMDC活性は開花5日前に顕著に増大し,その後は急速に低下した.一方,両酵素ともmRNA転写量は恒常的に発現していたが,mRNA翻訳量の変化パターンは酵素活性のそれと類似し,葯のポリアミン合成酵素活性は翻訳のレベルで発育的に制御されていることが明らかとなった.これに対して,高温遭遇葯では,ADC活性は高温非遭遇のものと差異がなかったが,開花5目前におけるSAMDC活性の増大が起こらなかった.高温遭遇葯では高温遭遇時の葯の齢に関わらずmRNA転写量が少なかったが,mRNAの翻訳やproenzymeの加工は高温の影響を受けなかった.これらのことから,SAMDCの遺伝子発現は特異的に高温に敏感であることが明らかになった.また,開花8-5日前に高温に遭遇した葯では,高温非遭遇葯でみられた結合態スペルミジン(Spd)含量の顕著な増加が起こらず,稔性花粉数が高温非遭遇花のそれの1/2に減少したが,高温遭遇前に2.5mM Spdを処理すると花粉稔性に対する高温の悪影響が緩和された.以上の研究結果から,蕾の高温遭遇による花粉稔性の低下には,葯におけるSAMDC遺伝子発現抑制が密接に関係していると結論された.本研究の成果はPlant Scienceに投稿すべく準備中である. 2.トマト花粉の長期貯蔵による発芽力低下と花粉のポリアミン合成能との関係 24ヶ月以上貯蔵したトマト花粉は発芽力(発芽率および花粉管伸長)が著しく低かった.このような花粉では培養後におけるADCおよびSAMDC活性の増大やポリアミン含量の増加が起こらなかった.酵素活性が増大しなかったのは翻訳能力の減退によるものであった.しかし,花粉をSpdで前処理すると発芽率と特に花粉管伸長が良好になり(このSpd効果には花粉のタンパク合成能の高まりが関係),受精能力(着果能力)が改善された.
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Research Products
(1 results)