2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト消化器癌におけるβ-カテニンがん遺伝子シグナル伝達活性化と制御機構の解明
Project/Area Number |
02F00527
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
源 利成 金沢大学, がん研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OUGOLKOV Andrei V. 金沢大学, がん研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 大腸癌 / がん遺伝子 / β-カテニン / がん化シグナル伝達 / APCがん抑制遺伝 / ras |
Research Abstract |
細胞接着因子として同定されたβ-カテニンはユビキチン化分解機構から逸脱して安定化されて細胞核内に移行し,固有の情報伝達(Wnt/β-catenin/Tcf)系を介してがん遺伝子の作用を発揮することが近年の分子腫瘍学的実験系で提唱された.とくに大腸癌では新規がん遺伝子として注目され,臨床的な癌における生物学的機能の解明は重要な課題である.我々は最近,大腸癌200数十例を対象に国内外でも例のない系統的解析を行い,β-カテニンの腫瘍浸潤先進部における特異的活性化が癌病態や悪性度診断の分子指標になることをマトリックス分解酵素の転写活性化の観点から明らかにし,他に先駆けて報告してきた. 本年度は,β-カテニンの特異的活性化・制御の分子機構を解明するために,細胞内におけるβ-カテニンの生理的発現,造腫瘍性シグナル伝達やがん遺伝子としての活性化機構に関与する可能性のある分子群を個別的に対象にして,大腸癌における発現や動態をβ-カテニンの活性化パターンと比較検討した.その結果,このがん遺伝子の腫瘍浸潤先進部における特異的活性化がAPCがん抑制遺伝子の不活化に依存しないことが解った.また,このがん遺伝子活性化パターンにはβ-カテニンそのものを標的とするubiquitin ligase受容体β-transducin repeats-containing protein (βTrCP)の発現が密接に関与することも明らかにした.現在,大腸癌の多段階発癌・進展過程に関与するがん関連遺伝子のうちこのシグナル伝達系との関連が示唆されているp53やrasとの関連性を調べている.途中経過ではあるが,β-カテニン活性化はp53がん抑制遺伝子の不活性化やrasがん化シグナルの活性化とは明らかな相互反応を示さなかった.一方,少数ではあるがβ-カテニンとrasがん化シグナルが同時に活性化されている腫瘍は悪性度が高く,転移や再発が高率であった.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ougolkov A, et al.: "Abnormal expression of E-cadherin, β-catenin and c-erbB-2 in gastric cancer with liver metastasis"International Journal of Colorectal Diseases. on-line first. on-line first (2002)
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[Publications] Minamoto T, et al.: "Detection of oncogenes in the diagnosis of cancers with active oncogenic signaling"Expert Review of Molecular Diagnostics. 2・2. 565-575 (2002)
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[Publications] Minamoto T: "Molecular Toxicology Protocols/Methods of Molecular Biology"Humana Press(印刷中). (2003)