2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00663
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 耕司 京都大学, 東南アジア研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
UGSANG Donald Manaytay 京都大学, 東南アジア研究センター, 外国人特別研究員(PD)
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Keywords | フィリピン / 沿海域 / マングローブ / 水産養殖 / 資源管理 / 人工衛星画像 / 環境保全 |
Research Abstract |
本研究は、東南アジアの沿海域を対象として、資源利用の変容と資源管理の実態を包括的に明らかにすることを目的とした。具体的には、フィリピン南部のボホール島を対象として、1950年代以降50年間の沿海マングローブ林地帯の土地利用の変化を固定すると同時に、水産業振興や環境保全に関する制度・政策の変遷を明らかにしたうえで、沿海域の土地利用変化のメカニズムを総合的に考察し、今後の沿海域資源の持続的な利用・管理を実現するための視座を提示した。 主な成果は以下の通りである。 大縮尺地形図や人工衛星画像の解析から、ボホール島全島でのマングローブ林地帯の面積は、1950年代末から1970年代前半にかけては約15,000haであったのが、1970年代半ば以降、急激に減少し、1980年代末には11,000ha、1990年代末には8,000haとなった。その主たる原因は水産養殖の成長である。1975年に養魚池の造成を公的に認める制度が制定された。それを端緒として水産養殖が本格的に拡大するようになった。それ以降、1980年代末までの養魚池の拡大とマングローブ林の減少はほぼ相関しており、マングローブ林から養魚池への転換が、この期間のマングローブ林減少の主たる要因と考えられる。 ところが1990年代になると、沿海域利用に関する制度・政策が水産業振興から環境保全を重視するものへと変更された。その結果、新たな養魚池造成はほぼ停止した。ところがマングローブ林は減少を続けた。マングローブ林地帯の詳細な土地利用分析から、この期間のマングローブ林の減少は、養魚池からの排水あるいは養魚池におけるなんらかの経済活動が周辺のマングローブの生育環境を劣化させたことに起因していることが示唆された。 すなわち、今後の沿海域環境保全において、土地利用の面的な規制のみならず、水質管理等の質的な管理が、地元民の経済活動とマングローブ林地帯の環境保全を両立させる上で重要であることが示された。
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