2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00765
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片柳 榮一 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HENTRICH Thomas 京都大学, 大学院・文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 障害者 / 旧約聖書 / 不浄 / 物語テキスト / 批判的分析 / サムエル後書 / ダヴィデ / 嘲笑 |
Research Abstract |
我々の研究計画は二つに分かれる。一つはテキスト(ヘブル語聖書及び聖書以外のテキスト)の批判的分析であり、もう一つは倫理的歴史的研究であり、後者は2004年度に計画している。前者のテキスト分析は、旧約聖書サムエル後書に焦点を当てる。これまでの研究結果をまとめて報告する。 この書で障害者が重要な役割を演じる箇所が二つある。一つは5章6-8節であり、そこではダヴィデに攻められたエブス人が、「お前(ダヴィデ)など目の見えない者、足の不自由な者でも追い払いうる」と言う。これはダヴィデに対する嘲笑ともとれるし、自分たちは最後のもっとも弱い者まで戦うとの決意ともとれる。しかしレビ記の不浄の法(障害者は不浄である)を考慮に入れると、障害者は戦略的な理由からこの位置に置かれたと考えられるべきである。つまりダヴィデ側の戦闘員は、これら障害者に触れると自ら不浄になると考え、忌避せざるをえないのである。 もう一つのテキストはサムエル後書に広く伝えられたメリバール、或いはメヒボシェトと呼ばれる障害者の物語りである。彼は先王サウルの子孫であるが、ダヴィデは滅ぼさず、手厚くもてなす。名前が異なるごとく二人いたのかとの問いが未解決であり、さらに前の物語との矛盾も目につく。つまり前者でのダヴィデの障害者への否定的な見方と、後者での、障害者へのダヴィデの厚遇とには一貫性が欠けている。これをどう解釈するかが問題である。
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