2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00765
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片柳 榮一 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HENTRICH Thomas 京都大学, 大学院・文学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 障害者 / 古代近東 / 病 / 罰 / 清浄 / 唯一神 / 生と死 / 呪術 |
Research Abstract |
「古代近東における障害者の位置づけ」を明らかにするために、先ず古代近東の二大文明であるメソポタミア、エジプトにおける病と癒しの捉え方が探られた。メソポタミアにおいては、ハムラビ法典等に見られるように、病は基本的には病む者に対する神々の罰とされ、それから癒されるための呪術的方法が発展させられていった。エジプトにおいては、癒しの方法は合理的方法と呪術的方法に分岐して精巧に展開されていった。その際この生を終えた者は、別の近似した死後の生をおくると考えたところにエジプトの特徴がある。この二つの文明の影響下にあった古代イスラエルにおいては、病は基本的には罰であったが、どの神の罰かを特定しなけれはならないのではなく、唯一なるヤーヴェ神の罰と考えられた。この神に対する怖れのもとに、独自の「清浄の掟」が規定されていった。この掟に属するレビ記21章17-23節によれば、障害者は神の面前において汚れた者と見なされていたことがわかる。このような一般的な障害者観が存した古代イスラエルの障害者への対応は、サムエル記下におけるダビデ王の障害者への態度のうちで、より具体的に示されている。この社会で障害者は、神聖な場から厳しく排除されていた。しかし俗的な場緬での規制はかなり緩やかであったことがわかる。先王の子供で足の悪かったメリバールは、大祭司を兼ねた政治的指導者の資格は剥奪されていたが、土地の所有者としては認められていたのである。古代イスラエルにおいては、障害者に対する宗教に由来する厳しい眼差しが支配的であったが、世俗社会的場面においては、かなり配慮されていたことが知られる。
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Research Products
(1 results)