2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F00785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 力 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥雲 其其格 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 民衆科学 / 科学啓蒙 / 学制 |
Research Abstract |
日本人は本格的な西洋科学の洗礼を受け、それを摂取し、制度化され、さらに自立した発展を遂げて、日本を科学技術的国に育ったのが、アジアにほかの例が見られないことである。本研究では、その科学知識や技術の民衆一般の間での広い範囲の普及浸透は、その成功をなした重要な一環のように考えられる。 明治政府の成立当時、その欧化政策の推進に伴って、政府のあたりまえの課題となったのは無知な民衆への科学啓蒙対策の作成と推行であったろう。西洋科学技術の全面的な導入を図った明治政府の歩きだした第一歩は、平等・独立を主張し、「全民皆学」を唱えた主智主義教育の強制施行であった。そこで、日本の最初の近代的学校制度が成立し、科学啓蒙や人材養成の制度が確立された。その二〇年後、中国では、この学制を下敷に「発卯学制」が制定されたが、その指導思想となったのは中体西用論であった。結局、日本の近代化の速やかな推進と対照的に、中国の近代化は新文化運動期の西洋科学思想に対する全面的な受容を持たなければならなかった。 他方、幕末から明治初期にかけて、新聞や出版業の発達に伴って、大量の科学記事報道や民間向けの科学啓蒙書物、雑誌等の出版物も、科学知識の一般民衆への浸透に重要な役割を果たした。福沢諭吉の『西洋事情』の刊行を嚆矢に、科学啓蒙書物、科学小説、文部省編集『百科全書』等次々に世を問い、空前の窮理熱が流っていて、民衆の科学知識や技術に対する理解のために極めて大きな役割を果たしていた。
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