2003 Fiscal Year Annual Research Report
1分子操作・1分子観察技術を用いたFoFl-ATPaseの回転メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
02F00809
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野地 博行 東京大学, 生産技術研究所, 助教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RONDELEZ Yannick 東京大学, 生産技術研究所, 外国人特別研究員
|
Keywords | 分子モーター / ATP合成酵素 / マイクロ加工技術 / マイクロ生化学チップ |
Research Abstract |
(1)目的 F1モーターは、ATPの加水分解のエネルギーを利用してトルクを発生し、分子中央のサブユニットを回転させる回転分子モーターである。これまで、我々は、モーターが回転している様子を1分子単位で観察し、さらに操作することで、回転力発生のメカニズムを明らかにしてきた。本プロジェクトは、fLという超微小溶液を閉じ込めるマイクロチャンバーの開発を行なう。マイクロチャンバーに1分子を閉じ込めることができれば、たった1分子が触媒する化学反応の生成物の濃度が検出できるほど大きくなることが期待される。これは、それ自身で新規の1分子活性測定装置となり得る。本プロジェクトでは、さらにこのマイクロチャンバーを、既に我々が開発してきた1分子観察・1分子操作技術と組み合わせてF1モーターのメカニズムを解明することを目指す。 (2)結果 H14年度は、まずマイクロチャンバーの作製方法を確立し、実際に溶液を閉じ込めることを検査することを行なった。半導体の加工に用いられるマイクロ加工技術を用いてマイクロメートルサイズの鋳型を作製し、その上にシリコン系ポリマーを流し込み重合させる。ポリマーを引き剥がし、顕微観察用のガラスに付着させることでマイクロ空間が作製されたことを顕微鏡で確認した。その後、溶液を用いてマイクロ空間を作製した。その際、溶液に直径100nmビーズを添加しておき、マイクロ空間でのブラウン運動を確認した。その結果、ビーズのブラウン運動がマイクロ空間の内部に制限されていることが明らかとなった。しかも、観察したマイクロ空間の殆どで、制限されたブラウン運動が観察され、非常に収率が高いことが示された。 (3)今後の計画 H14年度の結果から、少なくとも100nmの物体はマイクロ空間に閉じ込められることがわかった。H15年度は、蛍光色素を閉じ込めて蛍光の消光から、分子レベルで閉じ込めが成功しているのかを検証する。その他、実際にマイクロチャンバーにF1モーターを閉じ込め、回転にともなうATPの消費によって速度が下がることでも、閉じ込めを確認する予定である。
|