2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F02519
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
児玉 正昭 北里大学, 水産学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LAM Ironside Hoi Yeung 北里大学, 水産学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 麻痺性貝毒 / タンパク / パパイン / システイン / チオール / 活性 |
Research Abstract |
麻ひ性貝毒(PSP)はAlexandrium tamarenseなどの渦鞭毛藻が持つ強力な神経毒で、食物連鎖で二枚貝に蓄積する。蓄積した毒は時間とともに変化を受けないまま貝の体外に排出されると考えられてきた。筆者らは前年度までの研究で貝に取り込まれた毒の一部が貝のタンパクと結合することを明らかにした。タンパクに毒が結合した場合、タンパクの構造は変化し、このことがタンパクの生理機能に影響を与えることが考えられる。そこで本年度は、生理活性を持つタンパクとしてパパインを選び、毒の存在下でのパパインの活性を調べ毒とタンパクの生理活性の関係を検討した。パパイン活性は基質に人工基質N^α-benzoyl-DL-arginine-p-nitroanilide(BAPNA)を用いる吸光度法で調べた。毒には11-0-sulfateを持つ毒成分GTXsとCトキシン、およびこれをもたない毒成分STXおよびneoSTXを用いた。これら毒成分の存在下で測定したパパインの活性は、対象に比較して有為に低下した。活性の低下はGTXsおよびCトキシンで高く、STXおよびneoSTXでは低かった。以上の結果はPSPがパパインの活性を阻害することを示すもので、本阻害効果はPSPと結合することによりパパインが構造変化を起こし、この構造変化が活性に影響を与えたためと考えられた。11-0-sulfateを持つ毒成分はタンパクのシステイン残基のチオールと結合する。また、種々のPSP成分はその強い陽電荷によりタンパクと結合する。活性阻害は11-0-sulfateを持つGTXsやCトキシンばかりでなくこれを持たないSTXやneoSTXでも見られた。このことはPSPはチオールを介した結合ばかりでなく、陽電荷による結合でもパパインと結合していることを示唆する。すなわち、どのような形で結合しても、毒の結合はパパインに構造変化を起こし、このことがパパインの活性に影響を与えることが明らかになった。本研究の結果はPSPが神経毒ばかりでなく、タンパクに結合することでその活性を阻害する作用を持つことを示すものである。
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