2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02F02764
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Research Institution | 高エネルギー加速器研究機構 |
Principal Investigator |
鈴木 健訓 高エネルギー加速器研究機構, 大強度陽子加速器計画推進部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DJOURELOV Nikolai 高エネルギー加速器研究機構, 大強度陽子加速器計画推進部, 外国人特別研究員
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Keywords | 陽電子消滅 / ポジトロニウム / 高分子表面 / ポリプロビレン / 超高分子量ポリエチレン / イオン照射 / 半導体検出器同時計数法 / 高分子空隙 |
Research Abstract |
本プロジェクトでは、(1)陽電子消滅実験にかかる各種装置の調整、運転、(2)陽電子消滅法の高分子材料への応用、(3)低速陽電子ビーム装置の建設、高分子材料の表面解析への応用について行った。 陽電子消滅法の手法で高分子材料に使われるものとして、陽電子寿命測定法(PALS)と半導体検出器による同時計測法(CDBS)が一般的であり、本研究でもこれらの手法を用いた。また、数100nm厚さの高分子薄膜や金属板上に塗布された数10nm〜数100nmの高分子被膜の特性を測定する場合に、数100eV〜10keVの低速陽電子ビーム装置が必要であり、表面における高分子の欠陥や高分子の空隙の大きさを定量的に推定する上で、重要である。これらの手法や装置を使い、14編の学術論文を発表し、8編が投稿中である。ここではいくつかの研究例について説明する。 陽電子消滅の過程で、材料の化学的性質が消滅の基礎過程に大きな影響を与え、PALSはこれらの影響を測定することが可能である。この解析手法をポリプロピレン高分子(PP)に応用した。PPは酸化に弱いことが知られており、市販の材料には酸化防止剤が添加されている。防止剤はポジトロニウム(Ps)生成を抑制し、酸化剤のあるPPと無いPPとでは、Ps強度に大きな変化が見られた。また、2台の半導体検出器を用いたCDBSでは、酸化剤が無い試料では酸素の影響が強くなり、Ps生成に影響を与えているのは、酸素を取り込んだカルボニル基の生成であると考えられる。 低速陽電子ビームを用いると表面や薄膜中に存在する高分子空隙を測定することが出来るので、半導体技術に欠かせない半導体表面の被膜特性を測定することが可能である。さらに、短パルス化されたビームを用いると、PALSの測定ができ、応用が広がる。高分子材料表面の高分子バルク硬化物の自由体積は、普通の方法では測定することが不可能である。
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Research Products
(9 results)