2004 Fiscal Year Annual Research Report
同所的に生息する食植性テントウ2種間の遺伝子流動の推定
Project/Area Number |
02J00007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 憲生 北海道大学, 総合博物館, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遺伝子流動 / ヤマトアザミテントウ / ルイヨウマダラテントウ / 遺伝子系統樹 / 種分化 / ニジュウロクホシテントウ / ニジュウハチホシテントウ |
Research Abstract |
研究課題「同所的に生息する食植性テントウ2種間の遺伝子流動の推定」の一環として、オーストラリア・ブリスベンでジャガイモから採集したニジュウヤホシテントウS型とニジュウロクホシテントウのミトコンドリアDNAチトクロームCオキシダーゼI遺伝子と核ITS2領域の塩基配列の決定し、比較を行った。これら2種は外部形態や交尾器の変異から、明瞭な別種とされている。しかし、ミトコンドリアDNAでは、ニジュウヤホシテントウS型とニジュウロクホシテントウの間に遺伝的分化は認められず、同じ塩基配列型を種間で共有する場合も検出された。一方、核ITS2領域では、ニジュウヤホシテントウS型とニジュウロクホシテントウ種間に約5パーセントという顕著な遺伝分化が認められた。これらのことから、核遺伝子では種間の遺伝子流動が妨げられるものの、ミトコンドリアDNAの様に生存に対して等しい機能を有する様な遺伝子では、遺伝子流動が充分に制限されていない事が推測された。 これに対して形態変異や交配実験から、より近縁であり、且つ食草が異なるヤマトアザミテントウとルイヨウマダラテントウでは、核ITS2領域では変異が認められず、0.1パーセントではあるがミトコンドリアDNAには違いが認められている。これから遺伝子流動は最近になって制限されるようになった事が推測される。 今回のニジュウヤホシテントウS型とニジュウロクホシテントウのように食草が共通する場合、有る程度遺伝的に分化した2種であっても遺伝子流動を生じさせ、一方、ヤマトアザミテントウとルイヨウマダラテントウのように食草が異なる場合は、近縁であっても遺伝子流動を制限することが考えられ、食草選択の違いが大きな遺伝子流動の制限要因となりうることが示唆された。
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Research Products
(3 results)