2002 Fiscal Year Annual Research Report
同所的に生息する食植性テントウ2種間の遺伝子流動の推定
Project/Area Number |
02J00007
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 憲生 北海道大学, 総合博物館, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 遺伝子流動 / ヤマトアザミテントウ / ルイヨウマダラテントウ / ミトコンドリアDNA |
Research Abstract |
ヤマトアザミテントウ(以下ヤマト)とルイヨウマダラテントウ(以下ルイヨウ)の2種間に遺伝子流動が生じているか否かを検証するため、2種が同所的に棲息する地点と異所的に棲息する地点のミトコンドリアDNAの塩基配列を決定・比較することにより、評価した。 ヤマトとルイヨウの棲息地点は僅か数メートル程度であり、充分に同所的と言える地点として、宮城県仙台市作並と秋保を選定した。また、近隣数百メートル以内にルイヨウの食草が生育していないことから、異所的にヤマトのみが棲息すると考えられる地点として、同市栃原と野尻を選定し、これらの地点から採集を行った。 実験では、計291個体のmtDNA COIの塩基配列(985bp)を決定し、4種類の塩基配列型(ハプロタイプ)を検出した。作並のヤマトではハプロタイプA、B、Cが検出され、その頻度は、それぞれ9%、87%、4%であった。また、作並のルイヨウでは、ハプロタイプA、Dが検出され、頻度はそれぞれ84%、16%であった。また、秋保のヤマトとルイヨウではハプロタイプAとBが検出され、頻度はヤマトで28%、72%、ルイヨウで71%、29%であった。一方、野尻と栃原のヤマトでは、ハプロタイプBを持つ個体のみが観察された。 仮に、ハプロタイプAをルイヨウ由来、ハプロタイプBをヤマト由来とする。異所的に棲息し、遺伝子流動の可能性がより低い栃原や野尻では、ヤマトはハプロタイプBに固定している。一方、同所的に棲息し、遺伝子流動の可能性がある作並や秋保では、ハプロタイプBが高頻度に検出されるものの、ある頻度でハプロタイプAも検出されている。このことは、同所的な地点で遺伝子流動が生じているというと矛盾しない。しかし、ハプロタイプの共有は、祖先多型によっても生じるので、更に遺伝子を増やして解析する必要がある。
|
Research Products
(1 results)