2002 Fiscal Year Annual Research Report
北東アジア海獣狩猟民における生活形態と文化系統の動物考古学的研究
Project/Area Number |
02J00032
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内山 幸子 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | オホーツク文化 / 続縄文文化 / 生業 / 動物儀礼 / 多様性 / 自然環境 |
Research Abstract |
本年度は、目梨泊遺跡(北海道枝幸町)、オションナイ2遺跡(北海道礼文町)、ザーパトナヤ10、12遺跡(ロシア サハリン州)の調査に従事し、出土した資料の分析にあたった。このうち目梨泊遺跡では、当時の人々が遺棄した多量の食物残滓や釣針などの道具類の出土を確認することができた。この釣針は大型の組み合わせ式釣針であり、食糧残滓の分析結果と合わせて、当時の釣漁についての具体的な復元を試みた。また、この釣針の先端には、クマの手がデザインされており、当時のヒグマに対する特別な観念が漁撈具にも見出せる点は興味深い。オションナイ2遺跡については、続縄文時代に属する出土資料の分析を行った。この遺跡では、銛頭や釣針が得られているが、これらは形態的特徴から、道南部との関わりを示す資料と位置づけられる。ザーパトナヤ10、12遺跡では、「ザーパトナヤ10タイプ」の土器群を伴う貝塚の調査にあたった。遺跡からは、食物残滓が多量に出土しており、その分析結果から、遺跡を営んだ人々が海洋よりはむしろ、湖に依存した食生活を送っていた可能性が高いことが明らかとなった。この資料は、オホーツク文化の生業活動のみならず、経済基盤について考察する上でも、不可欠な資料といえよう。 また、本年度は、これまでにサハリンで行った調査成果に基づき、サハリン中部におけるオホーツク文化末期の動物利用について論文を著した。オホーツク文化については、日露両国に跨って分布しているにも関わらず、これまでのところ、日本の遺跡を中心として検討される傾向にあった。そのため今回は、サハリンの遺跡についての情報を加味して検討を加えたところ、オホーツク文化における動物利用が、これまで考えられてきた以上に多様性に富み、遺跡周辺の自然環境に適応している様相を明らかにすることができた。
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Research Products
(1 results)