2002 Fiscal Year Annual Research Report
景観構造と送粉者の行動パターンが稀少植物のジーンフローと絶滅リスクに与える影響
Project/Area Number |
02J00063
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 健太 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員 PD
|
Keywords | クロビイタヤ / 森林断片化 / ジーンフロー / 授粉実験 / 交配様式 / 景観 / 近親交配 / 送粉者 |
Research Abstract |
1.北海道千歳は絶滅危惧種(IB類)クロビイタヤの一大分布地だが、近年開発により森林分断化が進んでいる。森林の分断化が進んだとき、断片林冠のジーンフローが制限されると断片林内の近親交配が進み、断片林の局所個体群の更新が妨げられる可能性がある。この影響の強さは、送粉者の種類・自家不和合性の程度・近交弱勢の程度に依存する。これらを明らかにするためにクロビイタヤ3個体の樹上で、訪花昆虫の観察・採集および、強制他家授粉・強制自家授粉・送粉者誘導・送粉者排除・自然条件などの処理区からなる授粉実験を行った。現在この結果を解析中であり、ここからクロビイタヤの送粉者と交配特性が明らかになる。 2.千歳のモザイク状景観の約200ha内のクロビイタヤ(dbh>15cm)をすべてマッピングし、そこからサイズの異なる4つのクロビイタヤサブ個体群(個体数4・29・78・118)を選び、58個体の樹冠下に花/種子トラップ、18個体の樹冠にウィンドウトラップを設置し、各1週間ごとに回収した。これらのデータを解析して、以下の設問に答えていく。 a)個体群サイズは送粉者アバンダンスに影響するか? b)個体群サイズは種子の被食率・結実率に影響するか? 3.現実に起きているジーンフローの水準を調べ、近親交配の程度を調べるために、上記のクロビイタヤ個体すべてと、18のサブ個体群内に落下した種子を各50ずつ採集し、現在DNAを抽出している。これらのDNAを材料に、DNAマイクロサテライトマーカーを用いることで種子の親子判別を行い、花粉散布様式・種子散布様式を明らかにしていく予定である。DNAマイクロサテライトマーカーの開発については実験条件の最適化が終了し、現時点で6個のマーカーができている。
|