2003 Fiscal Year Annual Research Report
市場経済の各段階において労働組合が果たすべき役割に関する考察
Project/Area Number |
02J00078
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押見 善久 北海道大学, 大学院・法学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | ベトナム / ドイモイ / 労働組合 |
Research Abstract |
今年度は、ベトナムにおける労働組合法制のドイモイを中心的課題として研究を進めた。 2001年の改正ベトナム労働法典は、ベトナム労働組合による一元的労働者代表体制を強化するものとなった。すなわち、同法典第153条1項は、未組織事業体について、上部組合が臨時労働組合執行委員会を「指名」する(つまり、いわば強制設立する)こととしたのである。 ただし、これをもってドイモイ政策全般の流れに対する反動と評価するのは早計である。ドイモイ政策とはそもそも単なる「規制緩和」路線ではないし、現在進められている労働組合幹部の認識や能力のドイモイといった法制面以外のドイモイの進展次第では、上述した臨時労働組合執行委員会の「指名」は、将来における社会主義の達成と、現在における労働者の権利と利益の代表という二つの課題への、バランスのとれた解決策となる可能性も十分に認められるからである。 しかし、目下、国土の「工業化・現代化」政策の下で賃金労働者が急増している。1990年時点で400万人超であったその人口は、2000年では約900万人となり、2010年には2000万人を上回ることが見込まれている。そのとき、ベトナム労働組合が、その広範な労働者層の、しかも現在よりさらに多様化した権利と利益を十分に代表できなければ、現行労働組合法制は破綻をきたし、そのことは体制全体の崩壊を導く「蟻の一穴」となる可能性さえ否定できないところである。 以上が、今年度の研究から得られた小括的結論である。来年度は、このような観点から、一元的労働者代表体制の組織基盤を整えたベトナム労働組合に対し、たとえば使用者からの独立性を担保するシステムの構築など、労働組合がより公正かつ積極的に労働者の権利と利益を代表し得るような方向での労働組合法制のドイモイの可能性を探る予定である。
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Research Products
(1 results)