2002 Fiscal Year Annual Research Report
強度の駆除圧を受けるヒグマ地域集団の維持機構の解明
Project/Area Number |
02J00112
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 喜和 北海道大学, 低温科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヒグマ / 体毛回収トラップ / マイクロサテライト / 個体識別 / 行動圏 / 個体数推定 / DNA |
Research Abstract |
1.ヒグマの各季節の生息数とその性比を明らかにするため、捕獲を伴わない個体識別用試料としてヒグマの体毛を、体毛回収トラップを用いて集めた。調査はヒグマの活動期間中(4-11月)を通じて行った。 2.56本の背擦り木を延べ281回見回りし、40本から83試料を回収した。また、農地侵入時の痕跡22箇所から75試料を回収した。 3.これらの試料からDNAを抽出し、マイクロサテライトDNA多型を用いて個体識別を行った。すでに2000年度に回収された試料についても、DNA増幅過程に生じる誤差を減らすための追加実験を行った。さらに識別個体について、性染色体上のアメロゲニン遺伝子を用いて性判別を行った。 4.2002年に回収された試料については、全158試料中これまで64試料についてDNAの抽出、PCR法を用いた増幅に成功した。現在シークエンサーを用いて最終的な定量化実験中である。 5.2000年度に回収された試料については、実験誤差を補正し、年間を通じて浦幌地域を利用した個体数が最低26頭いたことが明らかになった。季節別に見ると、春と初夏に個体数が最も多く、秋に最も少なかった。季節間の利用個体数の差は、当地域を利用する個体が定着個体だけでなく、他からの移入個体がいるという、本研究の仮説を支持する証拠と考えられた。 6.各試料の採集地点から各個体の行動圏が描かれた。行動圏は個体間で大きく重複し、縄張りが見られないという従来の知見を支持した。行動圏のサイズは数十km^2の小型のものと、その倍以上の大型のものとが見られた。性判別の結果、小型の行動圏はオスとメス、大型のものはオスだけだった。小型の行動圏を持つオスは母グマと行動を共にするオスの子グマと解釈すれば、従来電波発信機を用いた個体追跡で指摘されてきた行動圏サイズの性的二型が個体の捕獲を伴わずに多数の個体で示されたことになる。
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