2002 Fiscal Year Annual Research Report
人工花序を用いた実験による、花序を訪れる訪花昆虫行動の解析
Project/Area Number |
02J00124
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石井 博 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | マルハナバチ / 花選好性 / 記憶メカニズム |
Research Abstract |
マルハナバチは各個体ごとに、好みの花(主専攻花)をもつことが多い。このような「花選好性」は植物の繁殖に大きな影響を持つことが指摘されている。例えば、ハチの花選好性が強いと、主専攻花間の、「同種間飛行」が増え「花粉が異種に運ばれてしまう」などといった具合である。 このように、ハチの「花選好性」と「同種間飛行」は同じ現象の両面であるかのように扱われてきた。しかし、「同種間飛行の頻度」は「花選好性の度合い」を正確に反映していない。例えば、花選好性の度合いが同程度であっても、訪問順序が[A:●●○●●○●●]なのか[B:●●●○○●●●]なのかで、同種間移動の頻度は(特に副専攻花=○にとって)、大きく異なる。 そこで、各ハチ個体の訪問順序が[A]なのか[B]なのかを調べた。ここでは、2種類の人工花序(青花花序と黄花花序)を交互に配置した採餌揚を用意し、そこを一匹のハチが自由に採餌できるようにした。また、ハチ個体がコロニーと採餌場の間を2往復するごとに花序の密度を変えた。ハチ(エゾオオマルハナバチ)コロニーは、春に野外で採取してきた女王を人工巣箱に営巣させることで得た。この実験で以下の結果が得られた。 (1)各個体の花選好性は数往復にわたり維持された。(例:青花を好む個体はコロニーに一度戻った後でも青を好む)。(2)花序密度が小さい時の訪問順序は[A]になるが、花序密度が大きい時は[B]になる傾向があった。その結果、(3)花序密度が大きい時は副専攻花序間でも同種間移動の頻度が高くなり、(4)花選好性が弱いハチ(青花も黄花も同程度訪問したハチ)でも、花序密度が大きい時は同種間移動の頻度が高かった。 これらの結果から、花序密度が大きい時は、副専攻花にとってさえもハチの訪問パターンが都合の良いものであることが示唆された。このような訪問パターンには、ハチの「階層的な記憶メカニズム」が関与していることが予想される。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Ishii, H.S., Sakai, S.: "Temporal variation in floral display size and individual floral sex allocation in recemes of Narthecium asiaticum (Liliaceae)"American Journal of Botany. 89. 441-446 (2002)