2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J00126
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀山 慶晃 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 水生植物 / 不稔現象 / 核DNA / 葉緑体DNA / 交雑 |
Research Abstract |
水生植物であるタヌキモ類では,雄性不稔や自家受粉など有性生殖の退行現象が起きている.本研究の目的は,タヌキモ類の様々な繁殖特性がどのように形成され,集団の遺伝構造を変化させているのかを解明することである. 本年度はタヌキモ,イヌタヌキモ,オオタヌキモを対象として,葉緑体DNAと核DNAの解析をおこなった.タヌキモは形態的な変異が大きく,各地で不稔現象が報告されている.葉緑体DNAのシーケンスの結果,イヌタヌキモとオオタヌキモは一塩基の置換と計8塩基の挿入・欠失によって識別されたが,タヌキモを特徴づける配列は存在しなかった.核DNAにおいても,イヌタヌキモとオオタヌキモは明瞭に二分されたが,タヌキモに特異的な配列は存在しなかった.更に,葉緑体,核ともにイヌタヌキモ型を持つもの(type1),葉緑体はイヌタヌキモ型だが核に重複が認められたもの(type2),葉緑体はオオタヌキモ型で核はイヌタヌキモ型のもの(type3),葉緑体はオオタヌキモ型で核に重複が認められたもの(type4),葉緑体と核ともにオオタヌキモ型のもの(type5)の計5タイプが存在していた.タヌキモと判断された個体は全てtype2-4であり,タヌキモはイヌタヌキモ(type1)とオオタヌキモ(type5)の雑種であることが明らかになった.また,雑種第一代と思われる遺伝子型(type2,4)に加えて,type4同士の交配あるいはイヌタヌキモとの戻し交配と思われる遺伝子型(type3)も確認された. 浮遊性の水生植物であるタヌキモ類は,有性生殖能力を失ったとしても水鳥による長距離散布と旺盛な無性繁殖能力によって分布を拡大することが出来る.雑種であるタヌキモがイヌタヌキモ,オオタヌキモと比較して極めて広い分布域を持っているのは,このような水草の生態的特性を反映したものと考えられる.
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