2002 Fiscal Year Annual Research Report
ゾル・ゲルコーティングとアノード酸化による高機能性複合酸化物皮膜の形成
Project/Area Number |
02J00132
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡辺 恵司 北海道大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ゾル・ゲルコーティング / アノード酸化 / アルミニウム電解コンデンサー / SiO_2(酸化シリコン) / 高機能性金属酸化物 / 並列等価電気容量 / 絶縁破壊電位 |
Research Abstract |
本研究は、ゾル・ゲルコーティングとアノード酸化を組み合わせることによりアルミニウム電解コンデンサー用誘電体皮膜の高機能化を目的としており、本年度は下記の項目について研究を行った。 1)高誘電性・高耐電圧アノード酸化皮膜形成における金属酸化物被覆層中の微細孔分布の測定 ゾル・ゲルコーティングにより金属酸化物を被覆したアルミニウムをアノード酸化することより、高誘電性・高耐電圧アノード酸化皮膜の生成が可能であることは、これまでの実験結果で明らかにしている。この誘電性・耐電圧の向上は、アノード酸化によって生成するAl-バルブ金属複合酸化物層の生成によることが大きい。この複合酸化物層は、アノード酸化を行うことによりゾル・ゲルコーティングの過程において発生した金属酸化物層内の微細孔中への酸化アルミニウム(Al_2O_3)の埋入により生成するためと推察される。これまで、透過型電子顕微鏡により金属酸化物被覆層の観察を行ってきたが、微細孔の大きさは透過型電子顕微鏡の分解能以下の大きさであるため微細孔の大きさの詳細が不明であった。そこで、ガス吸着定容法を用いて微細孔の大きさの詳細を調べた。その結果から、以下のようなことがわかった。 1.ゾル・ゲルコーティングによりアルミニウム上に被覆したSiO_2層内の微細孔の大きさは、約3〜10nmであり、皮膜/素地金属界面に近づくほど、孔径が小さい微細孔が多数存在する。 2.被覆回数の増大とともに、10nmほどの大きさの微細孔の数は減少し、3nmほどの大きさの微細孔の数は逆に増大する。これは、被覆を繰り返すことによりその前の被覆により生成した微細孔にゾル溶液が浸透するためと考えられる。 2)ゾル・ゲル法/アノード酸化複合プロセスによる高耐電圧性複合酸化物皮膜の作製における各種条件の影響 前年度において、(ア)ゾル・ゲルコーティングによりアルミニウム上にSiO_2を被覆し、これを希薄なホウ酸溶液中でアノード酸化すると、被覆層と素地アルミニウム界面にAl-Si複合酸化物外層と酸化アルミニウム(Al_2O_3)内層の二層からなる複合酸化物皮膜が生成すること (イ)SiO_2を被覆することにより生成皮膜の絶縁破壊電位が最大1,300Vまで上昇可能であること (ウ)高生成電流効率で欠陥のない緻密なアノード酸化皮膜の生成が可能であることを見出したが、本年度は上記高耐電圧複合酸化物皮膜生成における各種条件、特にSiO_2被覆条件およびアノード酸化条件の影響について調べた結果、以下のようなことが見いだされた。 1.SiO_2被覆回数の増加(SiO_2被覆層の増大)とともに、複合酸化物皮膜の生成速度や絶縁破壊電位が増大する。この傾向は、アノード酸化のさいの希薄電解質溶液の温度には依存しない。 2.SiO_2を被覆することにより高い電圧を支持できるアノード酸化皮膜の生成電流効率(全印可電流に対する皮膜生成電流の割合)が著しく増大する。SiO_2被覆層の増大とともに皮膜の生成電流効率が増大する。この結果は、前年度の結果から推測された「Al-Si複合酸化物層が高いアノード電場を支持する」ということを実証するものである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] K.WATANABE, M.SAKAIRI, H.TAKAHASHI, S.NAGATA, S.HIRAI: "Anodizing of Aluminum Coated with Silicon Oxide by a Sol-Gel Coating -Formation Mechanism of Composite Oxide Films with High Potential Sustainability-"Proceedings of The ECS & ISE Joint International Meeting. 146-153 (2001)
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[Publications] 渡辺恵司, 坂入正敏, 高橋英明, 平井伸治: "ゾル・ゲル法によりSiO_2を被覆したアルミニウムのアノード酸化 -新規な高耐電圧アノード酸化皮膜の作製-"表面技術. 54巻3号(掲載予定). (2002)