2002 Fiscal Year Annual Research Report
ナメクジをモデル動物としたにおい情報の末梢での符号化と中枢での解読機構の解析
Project/Area Number |
02J00169
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 伊織 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 嗅覚情報処理 / 神経同期振動 / 軟体動物腹足類 |
Research Abstract |
ナメクジは嗅覚中枢が単純で規則的な構造をもち,他の動物に比べてより抽象的な高次の嗅覚情報処理が研究されている.しかし,嗅覚中枢に入力されるにおい情報がどのように神経活動に符号化されるのかはよく分かっていない.多くの動物の感覚神経系では,神経細胞の同期振動活動がその情報の脳内表現に重要な役割を持つと考えられている.本研究ではナメクジ嗅覚末梢神経系での同期振動活動に注目し生理学的解析を行った. ナメクジの鼻である触角には触角神経節が存在し,これは触角神経束により嗅覚中枢へと連絡している.この神経束の断端から細胞外記録し,色々なにおいを異なる刺激時間,流速,濃度で与えたときの応答を解析した.その結果,においの種類に関わらず広い流速,濃度範囲において刺激前から存在する自発性低周波振動(1-2Hz)の振幅減少,誘引されたより速い振動(9Hz)という2種類の応答が見られた.また,強いにおい刺激ほど自発性低周波振動が大きく減少し,その回復も遅くなった.このにおい応答はγアミノ酪酸またはアセチルコリンのブロッカー存在下で抑えられた.また組織学的解析によりγアミノ酪酸およびアセチルコリンを含有する神経細胞の分布を決定した.以上の結果をJ Neurobiol誌へ投稿中である.また,触角神経節で発生した自発振動が,どのように触角神経束へと伝播するのかγアミノ酪酸などの薬物灌流実験により解析し,1-2Hzの電位振動が触角神経節内で広くコヒーレントになったときに伝播が起こることを明らかにした(J Neurophysiol誌へ投稿中).また,この自発振動を形成する神経回路網を同定するためパッチクランプ法により触角神経節の神経細胞から細胞内記録を行った.電流注入での発火パターン,自発性の活動の違いからいくつかのタイプがあることが分かった.今後,これらの細胞の振動形成への寄与について解析する.
|