2004 Fiscal Year Annual Research Report
泥炭湿地の保全及び賢明な利用のための泥炭土の分解制御に関する研究
Project/Area Number |
02J00203
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
飯山 一平 北海道大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 湿原 / 泥炭土 / 分解 / 二酸化炭素 / ガス拡散係数 / 地下水位 / 透水係数 / 水分特性曲線 |
Research Abstract |
前年度に続き、農地に隣接する原生湿原である美唄湿原を調査対象地とした。著しい乾湿履歴に曝されている排水路近傍において、地下水位と共に、泥炭土壌中のCO_2濃度分布変化を深さ10cm毎に、週に1〜2度の頻度で測定した。また、CO_2濃度の測定深度毎に100cm^3の不撹乱試料を採取し、土壌ガス拡散係数-気相率曲線を実測した。さらに、泥炭土壌の分解の指標として、当該深度ごとのC-N比を評価した。 実測された泥炭土壌のガス拡散係数-気相率曲線は、既往の研究にある鉱物土壌のガス拡散係数-気相率曲線の予測モデルによって著しく過大評価されたことから、泥炭土壌の性質を考慮に入れたガス拡散係数の予測モデルを提案する必要があると考えられた。また、泥炭土壌の分解が進行するにつれてガス拡散係数が上昇する傾向が見られたことから、泥炭土壌の好気的な分解が土壌通気性を向上させ、さらに分解を助長する、という正帰還的な機構の存在が示唆された。 4月の融雪から11月の降雪までの間の泥炭土壌中のCO_2濃度の変動範囲は、深さ50cmで4.9〜8.4%、深さ40cmで3.0〜7.1%、深さ30cmで2.0〜4.8%、深さ20cmで0.14〜1.32%、深さ10cmで0.05〜0.33%であった。また、地下水位変動との対応から、泥炭土壌中のCO_2濃度の上昇には、融雪後の地下水位低下に伴う土壌呼吸による漸増に加え、強雨後の急激な地下水位上昇に伴い深層に存在していた高濃度のCO_2が押し上げられ、浅層のCO_2濃度を上昇させる場合があると考えられた。このことは、泥炭土壌中のガス移動量を評価する際に、土壌中のガス輸送の主要な機構とされている拡散現象に加え、移流による輸送を考慮に入れる必要があることを意味しており、既往の研究で報告されてきた泥炭地湿原からのCO_2放出量の大きな季節変動を説明、予測する上で有意義な知見と言える。
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Research Products
(1 results)